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院内勉強会 「外反母趾の解剖と病態」

放射線技師の武田です。
8/31の院内勉強会に参加しました。
今回は”外反母趾の解剖と病態”についてまとめたいと思います。

☆はじめに

外反母趾とは母趾の外反を伴った第1MTP関節の亜脱臼、母趾種子骨の外側偏位および母趾の回内、第1中足骨内反および回内などからなる前足部変形である。
変形に伴い疼痛、腫脹、発赤、シビレが生じる場合もある。


図1 外反母趾足の外観
a)母趾の外反変形
b)母趾MTP関節内側の膨隆(バニオン)
c)第2,3趾のハンマー趾変形とPIP関節背側の胼胝

☆母趾の外反


2 母趾の外反変形の型
(a:適合型/b:偏位型/c:亜脱臼型)

[適合型] (図2-a)
・第1中足骨頭関節面と基節骨近位関節面が平行
・関節の適合性は良好であるが、母趾は外反している
・病的なものではなく変形が進行することはない

[偏位型] (図2-b)
・第1中足骨頭関節面に対して基節骨近位関節面が外方へ傾斜している
・変形が進行する危険性があり、一部が亜脱臼型に移行する

[亜脱臼型] (図2-c)
・基節骨関節面が外方へ亜脱臼している
・約半数に変形の進行がみられる


3 荷重位足背底像
a:外反母趾角
(第1中足骨骨軸と母趾基節骨骨軸のなす角度)
b:第1-第2中足骨角
c:第1中足骨内反角

〇母趾の外反の程度は、X線学的に荷重位足背底像における外反母趾角により評価される(図3)
↪非荷重像では外反の程度が低く評価されるため

〇外反母趾角の平均10°~15°であり、20°以上で外反母趾と診断できる
  軽度:20°~30°未満
 中等度:30°~40°未満
  重度:40°以上

☆母趾の回内・種子骨の外側偏位

〇母趾の回内変形は母趾種子骨の外側への亜脱臼または脱臼により生じる

⇒種子骨そのものが中足骨頭から外側偏位(脱臼)するのではなく、第1中足骨が内反するために生じる相対的な偏位である

⇒種子骨が外側偏位することで種子骨間を走行している長母趾屈筋・腱および短母趾屈筋・腱も同時に外側偏位し、母趾基節骨が回内する


図4 母趾種子骨の偏位度(加藤分類を改変)

a:Ⅰ度(正常)
b:Ⅱ度(外側へ軽度偏位している)
c:Ⅲ度(内側種子骨が中足骨の稜の直下にある)
d:Ⅳ度(内側種子骨が中足骨の稜から外側へ脱臼している)

☆第1中足骨の内反

母趾MTP関節内側の膨隆(バニオン,bunion)は第1足根中足関節での第1中足骨の内反の増大が原因である(図1-b)

・外反母趾が引き起こす疼痛で最も発生頻度の高い箇所である
・時に滑液包炎を伴って腫脹と発赤が生じる
・足背皮神経が損傷されてTinel徴候を認めることがある

〇第1中足骨の内反の程度は第1中足骨内反角および第1-第2中足骨角により評価される(図3)
⇒母趾の外反変形が進行するとともに第1中足骨内反角および第1-第2中足骨角は増大し、母趾MTP関節内側の膨隆も大きくなる

☆変形進展の機序

①母趾MTP関節の支持組織(内側)が弛緩・破綻する
(足底の横アーチが減少して扁平足障害も併発する)

②第1中足骨が内反する
(同時に第1中足骨頭が内側に偏位する)

③母趾基節骨が外反する
(母趾内転筋、外側種子骨および深横中足靭帯が緊張するため)

④母趾種子骨の外側への亜脱臼または脱臼
(第1中足骨頭が内側に偏位することによる相対的な外側偏位)

⑤母趾の回内
(同時に母趾外転筋腱が外側偏位していく)

⑥母趾の外反
(母趾の外転運動が障害され、さらに外反)

⑦長母趾伸筋・腱と長母趾屈筋・腱が外方に偏位
(bowstringが生じる)

⑧外反変形がさらに増大する