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院内勉強会「こどもの下肢・膝関節周囲の痛み」

はじめに

 

こんにちは、放射線技師の武田です。

6/10に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は“こどもの下肢・膝関節周囲の痛み”についてまとめたいと思います。

 

 

 

どう診断する?

 

外傷による痛みを除いて、小児の膝周囲の痛みは特徴・きっかけがはっきりしない場合が多くあります。

特に幼児からは痛む部位や痛み方を正確に聴き取ることは難しく、親からの病歴等の聴取・視診・触診・理学所見・画像所見など客観的な情報を的確に得る必要があります。

膝が痛くても原因は別にある場合もあるため、広い視野を持って診断することが重要です。

 

〈診察で聞き取るポイント〉

・転倒、打撲など外傷の有無の確認

・現在または1~2週間以内に発熱があるか確認⇒感染による炎症?

・直近でよく運動した、部活等で運動量が増えた

⇒オーバーユースによる一時的な炎症、筋肉痛?負担のかかりやすい構造?

 

などなど、私個人的によく診察で耳にする内容をまとめてみました。

 

以下からは膝関節およびその周囲に痛みを訴える可能性がある疾患(骨軟部腫瘍を除く)をまとめていきます。

 

 

 

【関節炎・骨髄炎】

 

①化膿性関節炎・骨髄炎

 

・早期に適切な治療を行わなければ、関節の成長障害をきたし、進行性の変形や関節破壊をもたらす。

⇒血行感染から大関節(下肢なら股関節・膝関節)に発症しやすく、特に乳児は注意が必要である。

 

・関節の痛みと発赤腫脹などの感染徴候が急性または亜急性に発症し、患肢の動きが悪くなる。(仮性麻痺)

 

・発熱を伴うことが多い。

⇒必ずしも発熱するわけではないため注意する。

 

 

 

②結核性関節炎・骨髄炎

 

・疑わなければ診断に至らない、結核菌による感染症で、確定診断までに時間がかかる。

 

・上記の①化膿性と比較して発症は緩やかであり、痛みよりも関節腫脹や跛行を主訴とする場合が多い。

 

 

 

③若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis:JIA)

 

・16歳未満で少なくとも6週間以上持続する原因不明の慢性関節炎と定義されている。

 

・罹患関節の数と分布、合併症、リウマトイド因子(RF)をもとに7つの病型に分類される。

⇒1)全身型 2)少関節炎 3)RF陽性多関節炎 4)RF陰性多関節炎

 5)乾癬性関節炎 6)付着部炎関連関節炎 7)未分類関節炎

 

・疼痛はないor軽度、発熱はなく、関節腫脹や跛行を主訴とする。

 

 

 

④慢性再発性多発性骨髄炎(chronic recurrent multifocal osteomyelitis:CRMO)

 

・複数部位に非感染性骨髄炎を生じ、慢性、ときに亜急性に経過して炎症を繰り返す自己炎症性疾患である。

 

・骨痛が初発症状として出現し、罹患骨が表層に近い場合は熱感や腫脹がみられる。

 

 

 

【関節内障害】

 

①円板状半月板

 

・半月板の先天的な形態異常で外側に多く、内側は極めて稀である。

⇒本来は「C」のような形である半月板が円盤状「〇」になっている。

 

・スポーツ活動や軽微な外傷から発症する場合もあるが、外傷歴がはっきりしなくても半月板が損傷して痛みの原因となる。

 

・症状として…

膝の痛み(外側)、膝が伸びない、曲がらない、引っかかり感、腫脹、脱臼感、曲げ伸ばしで引っかかって動かない(ロッキング現象)など。

 

 

 

②膝離断性骨軟骨炎

 

・関節軟骨下に亀裂が生じ、進行すると骨軟骨片が関節内へ遊離・脱落する疾患である。

 

・成長期のスポーツ選手にまれに起こり、繰り返されるストレスや外傷により軟骨下の骨に負荷がかかる事が原因と考えられている。

⇒血流障害により軟骨下の骨が壊死し骨軟骨片が分離、遊離する。

 

・性別では約2:1で男性に多く10歳代が好発年齢であり、85%が大腿骨荷重部内側である。

 

 

 

【膝伸展機構障害】

 

⇒以下に共通することは大腿四頭筋のタイトネスである。下肢の成長の70%が膝関節部で起こり、骨の成長に筋腱の成長が追い付かず不均衡が生じて発症する。

 

①分裂膝蓋骨

 

・膝蓋骨が先天的に2つ以上に分裂しており、両側例は約半数である。

 

・外側広筋付着部である膝蓋骨上外側に分裂骨片があるタイプが75%を占め、痛みを伴いやすい。

 

・分裂部に圧痛・隆起を認め、膝屈曲時にクリックを感じることがある。

 

 

 

②Sinding-Larsen-Johansson病(シンディング・ラルセン・ヨハンソン病)

 

・膝蓋腱の近位端が付着する膝蓋骨下端に不規則な骨化が生じる骨端症である。

 

・ジャンプを繰り返すスポーツに関連して起こりやすく、膝蓋骨下端の腫脹・圧痛を認める。

 

 

 

③Osgood-Schlatter病(オスグッド・シュラッダー病)

 

・膝蓋腱の遠位端が付着する脛骨粗面の骨端症である。

 

・成長期のスポーツ障害として有名だが、学校の体育以外のスポーツを行っていない小児でも発症しうる。

 

・脛骨粗面の腫脹・圧痛を認める。

 

 

 

【その他】

 

①壊血病

 

・重度のビタミンC欠乏症を壊血病と呼ぶ。

 

・下肢の痛みと脱力が起こり、全身のあらゆる所から出血しやすくなる。

 

・毛穴周囲の点状出血がみられ、進行すると歯ぐき・消化管・頭蓋内・骨膜下などで出血が起こり、未治療では死に至る場合もある。

 

・小児では親の食嗜好や自閉症スペクトラムなどによる偏食が主な原因である。

 

 

 

②白血病

 

・白血病はいわゆる血液のがんで、体内に侵入した病原微生物を排除する役割をもつ白血球系細胞ががん化(白血病細胞)し、その能力を獲得できないまま無限に増加する病態である。

 

・骨髄内で白血病細胞が増加すると骨髄で正常の白血球、赤血球、血小板の産生が低下し、これらの血球が減少する。

⇒貧血による疲れやすさ・顔色が悪い・めまい・息切れ・頭痛、発熱、白血球減少による肺炎・敗血症(血液中で細菌が増殖する状態)、血小板減少による歯肉出血・鼻出血・皮下出血などの出血症状など。

 

⇒骨の痛み、四肢の痛みとして出現する場合もあり、小児急性白血病の初発症状として約40%にみられるが、痛みは間欠的なこともある。

 

 

 

③成長痛

 

・成長期に起こる原因不明の下肢痛である。

 

・好発年齢は3~5歳の未就学児であり、膝周囲に急激に生じる痛みを夕方~夜間を中心に訴える。

 

・腫脹や圧痛、関節の運動制限などの異常は認めず、親がさするなどで落ち着き翌日には痛みが消えている、という一過性かつこれらを繰り返すのが特徴である。

 

・「ストレス」や「筋肉の疲れ」がたまり、痛みとしてあらわれると考えられているが、はっきりとした原因は不明である。

⇒ex)次子の妊娠・出産、入学・入園など環境の変化、親しい人・ペットとの別れなど

 

 

 

おわりに

 

今回は“こどもの下肢・膝関節周囲の痛み”についてまとめていきました。

まとめた病態の中にはレントゲン上で特徴的な所見がないものも多く、放射線技師の私にとっては「レントゲンを撮影しても異常を認めない患者さんの中にも、こんな病態の可能性があったのか」と非常に勉強になりました。

こどもの下肢を撮影する事は少なくないので、今回学んだことを念頭において業務に生かしていきたいと思います。