理学療法士の山形です。
今回の院内勉強会では、パーキンソン病と腰痛の関係について学んだため報告します。
◇パーキンソン病と痛み
パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)は、中脳黒質のドパミン神経細胞などにα-シヌクレインの凝集によるレビー小体が出現し、病気の発症や進展に関係すると考えられています。病期の進行に伴い、青斑核や脳幹などにも病変が広がると考えられています。
70~80歳代に最も多く、60歳代を過ぎると100人に1人がPDを有病すると報告されています。
PDは、よく知られている運動症状
- 静止時振戦
- 筋強剛
- 無動
- 姿勢反射障害
だけではなく
- 腰曲がり(camptocormia)
- 首下がり
- Pisa症候群/Pisa徴候
- 非運動症状
を伴う全身性の疾患です。
非運動症状には、
- 自律神経障害(起立性低血圧、便秘、頻尿など)
- 精神症状(不安、うつ、幻覚など)
- 睡眠障害
- 認知機能低下
- 痛み、感覚障害
などが含まれ、PDは加齢性の筋骨格系の腰背部痛に加えて、初期から非運動症状の一つとしての痛みや感覚障害も伴うことが多いです。
初期のPD患者において腰痛や下肢痛などの疼痛は約60%と高頻度で認められています。そのため比較的早い段階で整形外科を受診されていることも多いです。
また、多施設共同研究では痛みの有病率が78.6%と高く、痛みを自覚する部位として腰部、臀部、下肢後面、大腿後面などが多かったとされており、痛みはPDの進行期にかかわらず、複数部位に混在して出現することも多いことがわかります
◇PDの痛みの新しい分類
2021年にMyliusらによって、Parkinson’s Disease Pain Classification System(PD-PCS)が提唱されました。
・PD-unrelated pain:PDとは直接関係しない痛み
・PD-related pain:PDに関連する痛み
に分けられます。
さらにPD-related painを
- 侵害受容性疼痛
- 神経障害性疼痛
- 痛覚変調性疼痛
に分類します。
この分類を用いた解析では、PD-related painが77%を占め、その内訳は
- 侵害受容性疼痛:55%
- 痛覚変調性疼痛:22%
- 神経障害性疼痛:16%
と報告されています。
◇PDの痛みに対する治療
痛みに対する治療としては、薬物治療と運動療法が第一選択治療となりますが、難治性の場合は侵襲的治療も検討されます。
重要なのは、「腰が痛いから腰だけ治療する」では不十分という点です。
まず痛みの分類で記載したように、その痛みはPDによるものなのか?一般的な腰椎疾患など別の原因なのか?を判断する必要があります。
PD関連痛であれば、PDそのものの治療を十分に行うことが推奨されます。
〇薬物治療
① ドパミン作動薬
L-dopaなどの抗PD薬によって痛みが軽減することがあります。
そのため、under treatment(PD治療不足)を避けることや、continuous dopaminergic stimulation(CDS:持続的なドパミン刺激)
が重要となります。
脳神経内科医との連携が重要となります。
② 非ドパミン作動薬
PD患者に対するエビデンスは限定的ですが、一般的な疼痛治療と同様に、
- アセトアミノフェン
- NSAIDs
- 弱オピオイド
などが使用されることがあります。
また、PD進行期では痛みとうつが密接に関連するため、
- SNRI
- 三環系抗うつ薬
などが検討される場合もあります。
神経障害性疼痛に対しては、神経障害性疼痛の薬物療法に準じて治療します。
〇運動療法
PDにおける筋骨格系疼痛には一般的な慢性腰痛と同様に運動療法が重要とされています。
報告されている運動には、
- 自転車などの有酸素運動
- ウォーキング
- バランス訓練
- 四肢運動
- 認知課題を組み合わせた運動
などがあります。
これらによって、
- 歩行機能
- 四肢機能
- 認知機能
- バランス能力
などの改善が報告されています。
また、ADL制限についても一般的な慢性腰痛と同様に、リハビリテーション専門医、理学療法士、心理療法士などが関与し、患者教育に加え定期的な運動を行うことが推奨されています。
〇侵襲的治療
難治性の場合には、侵襲的治療も検討されますが、ここでは割愛させていただきます。
大切なことは「パーキンソン病患者の腰痛は、普通の腰痛としてだけで見てはいけない」ということです。
PD患者の腰背部痛には、
- 筋・関節などの筋骨格系
- 姿勢異常
- 筋強剛
- 無動
- ジストニア
- 神経障害
- ウェアリングオフ
- ジスキネジア
- 痛覚変調
- 骨粗鬆症・椎体骨折
- 一般的な腰椎疾患
など、様々な原因が関係します。
そのため、脳神経内科+整形外科+リハビリテーションなどの多職種連携が重要になります。
◇まとめ
今回、PDと腰痛の関係性について学び、筋骨格系や姿勢の問題だけではなく神経障害やウェアリングオフなど様々な要因が関係し合うことが分かりました。
当院では、「最近姿勢が悪くなってきた」、「体を起こして歩こうとしても直ぐに前屈みになる」といった姿勢異常の訴えで受診されPD疑いで他院で検査し発覚することが多いです。
そのような方の初期からの腰痛を予防・軽減していけるようにリハビリ職として運動療法や生活指導など積極的な関わりをもっていけたらと思います。