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クリニックブログ BLOG

院内勉強会「こどもの背骨の診かた~突発性・症候性側弯症」

●はじめに

こんにちは。
理学療法士の小幡です。
令和5年4月から院内勉強会が再開しましたので、学んだ内容をまとめていきたいと思います。

今回は「こどもの背骨の診かた~突発性・症候性側弯症」についてです。

突発性側弯症の特徴

発症年齢により、10歳未満の‘‘early onset”と10歳以降の‘‘late onset”に区分されています。
早期発症特発性側弯症(10歳未満)のなかでも、乳児期発症(0~3歳)は、特発性側弯症の中の1%で男女比3対2と男児に多く、左凸カーブで下位胸椎を頂椎とすることが多いとされています。
また学童発症(4~9歳)は特発性側弯症の12~21%で、2~4対1と女児が多く右凸カーブとダブルメジャーカーブが多いとされています。
残る大部分を占める思春期発症(10歳以上)では8対1と圧倒的に女児に多く、右凸胸椎カーブが一般的です。


●特発性側弯症のの画像検査

乳幼児期の側弯症の進行予測としては、コブ角以外に肋骨椎体角rib vertebral angle(RVA)が用いられます。


図1 肋骨椎体角

RVAの左右差をRVAD(RAV difference)として、20%未満であれば83%の症例が自然緩解し、20°以上であれば高率に変形が進行します。
Risser grade1以下で、コブ角20°以上であれば70%以上の症例で進行を認めており、思春期特発性側弯症においては、初診時におけるコブ角が大きいほど、骨年齢が低いほど変形の進行リスクが高いことがうかがえます。


 図2 年齢とコブ角による変形進行の頻度

●特発性側弯症の発症年齢による予後

FernaandesとWeinsteinの研究では、予後不良因子は女児と右凸胸椎カーブでした。
学童期発症は乳幼児期発症と比較して進行は遅いが、思春期発症と比較すると進行しやすく半数以上で進行がみられました。


●特発性側弯症の生命予後

大部分を占める思春期特発性側弯症は基本的には生命予後に影響はしないです。しかし乳児期および学童期側弯症においては長期経過で年齢別死亡率が予測値より高いことが報告されています。
胸椎カーブでは、コブ角80°以上で呼吸機能の低下を認め、コブ角90°以上では肺の機能が低下し右心室に機能障害や右心不全による死亡リスクが上昇します。
思春期発症であっても変形が高度な場合、呼吸器障害が生命予後に影響を与えると多数報告されています。

●症候性側弯症の特徴

何らかの基礎疾患の一つとして側弯症を生じるものを症候性側弯症といいます。例えば、神経筋性側弯症(脳性麻痺、二分脊椎、脊髄空洞症、筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、先天性多発性関節拘縮症など)、神経線維腫症、間葉系異常(Marfan症候群、Ehlers-Dietz症候群など)、内分泌疾患(Prader-Willi症候群、Noonan症候群、Turner症候群など)、骨系統疾患などが含まれます。
早期発症かつ高度に進行するものが多く、手術治療を要することが多い側弯症です。

症候性側弯症の画像診断

他の側弯症と同様に単純X線が基本となります。
神経筋原性側弯症では、大きなシングルカーブが多く、骨盤の傾斜を伴うことが多いです。進行例では肋骨と腸骨が接している像がよくみられます。Chiari奇形・脊髄空洞症に伴う側弯では胸椎左凸カーブが珍しくなく、胸椎後弯増強もよくみられます。
神経線維腫症のうちdystrophic typeでは、angular kyphoscoliosisに加え、rib pencilingや椎体のscallopingなどのdystrophic changeがみられます。椎体の回旋も強く、三次元的な評価のためには3D₋CTが必要になります。また椎体周囲の腫瘍の把握のためにはMRIが有用になります。
Marfan症候群では、ほとんどが広範なダブルまたはトリプルカーブであり、また矢状面アライメントの逆転(胸椎前弯化、腰椎後弯化)もよくみられます。漏斗胸の合併例も多く、胸椎の前弯化とあいまって胸郭の前後径が極端に短い例が多いです。
骨系統疾患では、椎体の変形や発育障害など疾患別に特徴的な所見がみられます。

●症候性側弯症の治療法
比較的若年で高度に進行する例が多いので、Growing Rod法やVEPTR(vertical expandable prosthetic titanium rib)などの固定術に踏み切らないといけないことも多いです。
また基礎疾患の持つ特異性により、治療上の注意点も多く、突発性側弯症の治療とはまったく異なるスタンスで治療を進めていかないといけないです。

終わりに
小児に関する疾患をみる機会は少なく、進行中の側弯症に対してのリハビリテーションを行うことはほとんどないが、術後の患者さんに出会う機会が時々ありますので、院内勉強会を通じて自己研鑽に努めて参りたいと思います。

参考文献
MB Orthop.34(4):27-32,33-39,2021