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院内勉強会「膝関節骨壊死症」

はじめに

 

こんにちは、放射線技師の武田です。

10/21に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は“膝関節骨壊死症”についてまとめたいと思います。


 

膝関節骨壊死症とは?

 

膝関節を構成する大腿骨(遠位部)や脛骨(近位部)に骨壊死を来した疾患です。

膝関節は股関節に続き、2番目に骨壊死になりやすい関節となっています。

原因や特徴から

・特発性膝骨壊死(SONK)

・二次性膝骨壊死

・post-arthroscopic(関節鏡手術後)膝骨壊死

の3種類に分類されます。

 

 

 

①特発性膝骨壊死
(spontaneous osteonecrosis of the knee:SONK)

 

50歳以上の中高年に多く、急な膝の痛みで発症します。

男性より女性に多くみられ、主に膝内側部に夜間痛や荷重時痛を認めます。

65歳以上の慢性的膝痛患者のMRIにおいて9.4%にみられるという報告もあります。

例)階段の上り下りで急な痛み

 

〈原因〉

軟骨下での脆弱性骨折

・骨壊死は脆弱性骨折が治癒に至らなかった部分の病態である。

・脆弱性骨折が骨髄内の循環を停止させ、虚血をともなう骨髄浮腫をきたす。

・脆弱性骨折の要因として内反変形や半月板損傷を伴う関節への過負荷が考えられる。

 


図1 右膝脛骨内顆特発性膝骨壊死(女性、54歳)

左上A:右膝立位正面単純X線

中上B:MRI SPIR(脂肪抑制の一種)冠状断、骨髄浮腫とシストを伴うSONKを脛骨内顆に認める。

右上C:CT冠状断、シストを脛骨内顆に認める。

左下D:脛骨内顆にドリリング、内反変形改善のため高位脛骨骨切り術(粗面下)を施行した。

中下E:術後CT冠状断、シストには腸骨移植を行った。

右下F:術後4カ月時CT冠状断、移植した腸骨と開大部は骨癒合を得られている。

 

シストとは?

大まかに嚢胞のことを指します。

ここでは骨嚢胞のことを指し、壊死と変性によって空洞を形成し、X線像では低吸収像となり黒く抜けて写ります。

 

 

 

②二次性膝骨壊死

 

ほとんどがアルコールやステロイドが原因となり、若い年代(45歳以下)に起こります。

女性に多く、大抵は両側性に起こります。

痛みは徐々に増強します。

 

〈原因〉

アルコールやステロイド

・骨髄内脂肪組織を増加させ、骨内圧が上昇、虚血を引き起こす。

 


図2 両膝二次性膝骨壊死

SLE(全身性エリテマトーデス)によるステロイド服用の既往あり。

MRI(STIR 脂肪抑制像)冠状断にて両膝の広範囲に骨壊死像を認める。

 

 

 

③ post-arthroscopic(関節鏡手術後)膝骨壊死

 

稀に、半月板切除やchondroplasty(軟骨形成術)後に起こります。

膝関節鏡手術後の4%に骨壊死が生じていたという報告もあります。

術後6~8週以降で症状が出現します。

 

〈原因〉

半月板切除による接触圧の変化

・負荷がかかる箇所が変わる、接触面が狭くなれば負荷が増大する。

軟骨下での脆弱性骨折が引き起こされる。

 


図3  右膝post-arthroscopic膝骨壊死(男性、53歳)

左上A:MRI(STIR 脂肪抑制像)冠状断、右膝外側半月板断裂を認める。

右上B:関節鏡視下外側半月板部分切除術後5カ月時のMRI(STIR 脂肪抑制像)冠状断、右膝大腿骨外顆に骨壊死像を認める。

左下C:MRI T1強調像矢状断、右膝大腿骨外顆に骨壊死像を認める。

右下D:MRI T1強調像、病巣部に骨軟骨柱移植術を行った(下肢アライメントは内反であった)。

 

 

 

膝関節骨壊死の画像診断

 

〈単純X線 Koshino分類〉

Stage1:発症期、症状はあるものの、画像上所見がない

Stage2:吸収期、荷重部の平坦化、骨吸収像、軟骨下骨の辺縁骨硬化像

Stage3:完成期、荷重部軟骨下骨の陥凹

Stage4:変性期、関節裂隙の狭小化、骨棘形成

 

特発性膝骨壊死(SONK)の発症初期は単純X線では病巣をとらえられないため、MRIを用いた診断が精度が高く効果的gold standardとされています。

 

MRIは同時に半月板・軟骨の状態も確認できるメリットがありますが、壊死病巣の確認は発症から4週以降に可能となります。

 

骨シンチグラフィは初期においては病巣部に取り込まれますが、MRIと比べて感度、特異度ともに劣っています。

 

 

 

膝関節骨壊死の治療

 

① 保存的治療

 

病巣部の範囲が3.5㎠未満と小さく、顆部に対する病巣部の割合が45%未満、Koshino分類Stage1の早期例に対して保存的治療を選択します。

・NSAIDs  ・筋力訓練  ・ヒアルロン酸関節注射  
・免荷  ・外側足底板の使用
・ビスフォスフォネート  ・パルス電気刺激 など…

 

 

② 手術的治療

 

進行例には手術的治療を選択します。

・人工膝関節単顆型置換(UKA)

・人工膝関節全置換(TKA)

・高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy:HTO)

・骨移植  ・関節鏡  ・骨軟骨移植術

・core decompression(骨内圧を低下させて修復を促すために,壊死領域から骨の中心部を1カ所以上除去する,または多数の小さな溝もしくは穿孔を作る) など…

 

Koshino分類Stage1.2の比較的早期であり、活動性が高ければ関節温存手術を選択します。

関節面の圧壊が存在すれば人工関節を選択します。

 

 

おわりに

 

今回は膝関節骨壊死症について学び、まとめていきました。

今回の勉強会でレントゲン上での所見、進行度によっての画像の見え方等を学ぶことができて良かったと思います。

今後はこの知識を患者様との関わり、撮影業務に生かせればと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。