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クリニックブログ BLOG

院内勉強会「アキレス腱断裂の診断、予後」

●はじめに

こんにちは、理学療法士の山形です。
今回の院内勉強会では「アキレス腱断裂の診断、予後」について学んだので報告します。

勉強会の様子です。
超音波検査の方法を教えていただいている場面。
実習生も参加していただきました。



●アキレス腱断裂について


・好発年齢
30~40歳代および50歳代以上との報告もあるが、年齢別の発生をみると20歳と28歳に高頻度にみられる。
10代から発生し、年齢や競技レベルに関係なく幅広く発生する

・受傷機転

受傷時のエピソードがはっきりしているケースが多い。
ジャンプ動作、踏み込み動作、バックステップ動作時などの瞬発系の動作において下腿三頭筋筋力(ふくらはぎの筋肉)を急激に発揮した際に発生する

断裂時は、後ろから蹴られたような感じ、バットで叩かれたような感じ、などの表現やpop音の自覚を聴取できることが多い。

・歩容
歩行自体は可能であるが下腿三頭筋筋力の伝達ができなくなるためベタ足での歩行となる。
体重を支えての踵上げができなくなることにより走ること、階段昇降、つま先立ちは不可能である。


●診察内容

・問診
年齢、性別、職業、スポーツ歴、症状の発現様式、受傷原因、経過などの聴取を行う。

・身体診察

・アキレス腱断裂部のgap(陥凹)の触知
断裂部の連続性が途絶し、腱の緊張が低下することで断裂部に相当してgapがみられる。
矢印の部分がgap

・Thompson test
下腿三頭筋を圧搾(つまむ)ことで足関節が底屈するかどうか確認する。
下腿三頭筋-アキレス腱-踵骨(かかとの骨)の連続性が保たれていれば足関節は底屈する。
健側も同様に実施し、左右差を評価することも重要である。


・Hyperdorsiflexion test
腹臥位で膝90°屈曲位とし、他動的に足関節に背屈強制を加えると断裂している場合、過背屈を呈する。
健側も同様に実施し、左右差を評価することが重要である。


・画像診断
CTやMRIも実施されるが少ない。
当院では徒手検査の他に超音波検査も実施しているため、ここでは超音波検査(US)について記載する。

・US
USは非侵襲(体を傷つけない)かつ簡便な検査で、腱や筋などの軟部組織の評価に優れている。
携帯型や持ち運びに便利な機器も多く、スポーツ現場でも評価できる。

正常のアキレス腱は連続性をもつ均一な線維状で映し出される。
断裂した状態では連続性は途絶し、不整線状で血種の存在も反映された低エコーで、両断部端は高エコーで映し出される。



●予後について

・スポーツ復帰
Zellersらによるとスポーツ復帰率は80%で復帰時期は平均6ヵ月、ただしスポーツ復帰の評価方法を明確に記載した論文では復帰率77%、記載していない論文では復帰率91%であった。
トップアスリートになると約1/3は元のレベルでの競技復帰はできていないとの報告がある。

・治療法の差異による復帰時期
Möllerらによると重労働、軽作業、事務職と分けると軽作業の仕事では手術療法が保存療法と比較して早期に復帰しているが、全体の復帰時期を比較すると手術療法と保存療法に差はなかったとの報告している。
Metsらは仕事復帰までに手術療法で平均59日、保存療法で平均108日を要し、手術療法の方が仕事復帰は早かったと報告している。

スポーツ復帰時期については治療法による差異は見いだせていない。

受傷側は治療法にかかわらず筋力低下、機能低下(可動域異常、腓腹筋の持久力低下など)がおこり、長期にわたって残存することが明らかになっている。

・再断裂の比較
直視下手術と経皮的縫合術では差は認められなかった。

従来の保存療法と手術療法では、基本的に手術療法は再断裂のリスクを減少させる。
従来の保存療法における高い再断裂率は長期の外固定や長期の免荷に起因すると考えられる。

厳格な管理下の保存療法、早期運動療法を行う保存療法と手術療法では、差はなかった。


●さいごに

今回の勉強会では、アキレス腱断裂の特徴的な所見、徒手検査やUSの実施方法について学びました。アキレス腱断裂が生じやすい場面など学んだことを今後の患者指導に活かし、予防に繋げていきたいと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。
今後の投稿も楽しみにしていてください。