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院内勉強会「肩甲骨骨折の治療」

〇はじめに
こんにちは、理学療法士の森田です。先日、院内勉強会が行われましたので、報告させていただきます。
肩甲骨骨折は発生頻度はそれほど高くないうえ、多発外傷の一つとして遭遇することが多く、骨折型も多岐に渡ります。
原因として、バイク等での交通事故や転倒・転落であり、直接的強い外力が加わることで受傷することが多いとされています。

<肩甲骨の解剖>
図解

肩甲骨には17個もの多数の筋が起始・停止するといわれ、これらの筋層は厚く、扁平な肩甲骨を周囲から保護しています。
そのため、骨折の頻度減少に貢献し、骨折が生じても多数の筋により転位が抑制され、その豊富な血流により骨折部の骨癒合は良好なことが多いとされています。

ちなみに筋17個挙げてみます。
①棘上筋  ②棘下筋   ③小円筋
④大円筋  ⑤小菱形筋  ⑥大菱形筋
⑦肩甲下筋 ⑧前鋸筋   ⑨小胸筋
⑩肩甲挙筋 ⑪僧帽筋   ⑫広背筋
⑬三角筋  ⑭上腕二頭筋 ⑮上腕三頭筋
⑯烏口腕筋 ⑰広頚筋

肩甲骨骨折は骨折全体の0.4-1.0%、肩甲帯骨折の3-5%。骨折部位は、体部50%、頚部25%、その他25%(肩峰、肩甲棘、烏口突起、関節窩骨折)に分類されています。
肩甲骨単独での損傷よりも肋骨骨折、鎖骨骨折、肩鎖関節脱臼、肩関節脱臼、上腕骨近位端骨折、腱板断裂など外傷を重複して伴うことが多いとされています。
そのため、肩甲骨だけでなく、他部位の骨折形態も踏まえて治療方法を決定していく必要があります。

<病態理論>
1933年Gossは肩甲帯部重複損傷の病態に関する
SSSC(superior shoulder suspension complex)理論を提唱しました。
内容
①.肩甲帯部は関節窩、烏口突起、鎖骨遠位部、肩鎖関節、肩峰によるリング状の複合体を形成しており、このリングは上方より鎖骨骨幹部、下方より肩甲骨体部で支えられている。
②.リングの1か所のみの破綻では安定性が維持されるが、2か所で破綻すると転位が大きく不安定となり、手術を要するというものと言われている。

一方、仲川らは
1階を関節窩、烏口突起、外科頚・体部、2階を鎖骨・肩峰・肩甲棘に分ける2階建構造理論を提唱した。
1階は上腕骨頭を介して直達外力、2階は肩峰からの外力によって生じると考え、重複損傷の病態を分析するものが言われています。


〇関節窩骨折

比較的稀な骨折でIdebergによれば6型に分類される。

〇肩甲骨頚部骨折
全肩甲骨骨折の25%を占める、高エネルギーlateral impaction injuryで生じる。
偽関節は少なく、変形治癒しても機能不全は少ない。
転位も少なく、骨癒合も良好であり、保存療法の適応である。

〇肩甲骨体部骨折
全肩甲骨骨折の50%を占める、血流が豊富で筋肉が厚いため、変形治癒が多いが、偽関節は少ない。機能不全は少ないため、基本的には保存療法の適応で2~3週の外固定を行うが、肩甲骨外縁が1cm以上短縮や大きな転位により変形治癒による機能障害が予測される場合は手術の適応となる。

〇肩峰骨折
直達外力で生じることが多く、変形治癒や偽関節は少ない。機能不全は少なく基本的に保存療法の適応であるが、転位が大きく肩峰下インピンジメントが予測される場合は手術適応となる。

〇肩甲棘骨折
稀な骨折で直達外力で受傷することが多い。血流が豊富で筋肉が厚く、機能不全は少ないため基本的には保存療法が行われる。偽関節は稀でなく、異常可動性がある場合は肩甲上腕関節の適合性が悪くなることもあり、注意が必要であるとされている。

〇烏口突起骨折
全骨折の0.1~0.25%を占め、末端骨折と基部骨折に分類される。
末端骨折は、基本的には保存療法の適応であるが、筋付着の影響で転位が大きく不安定性があるものは手術適応となる。
基部骨折は、単独骨折では保存療法を行うが2カ所以上で破断される場合は、手術適応となる。

〇さいごに
肩甲骨骨折は遭遇する機会もさほど多くなく、特に重複骨折は一般整形外科で診ることは稀ですので、改めて勉強することができ良い機会となりました。様々な可能性を視野に入れ研鑽していけるよう日頃より努めていきたいと思います。