理学療法士の山形です。
今回の院内勉強会では特発性凍結肩のタイプと
治療的アプローチの違いについて学んだためここに報告します。
○はじめに
凍結肩、いわゆる五十肩の発症メカニズムは現在も不明です。
五十肩の痛みや運動制限(肩の動かし難さ)は放っておいても
自然に治るものという誤認が未だに根強く残っています。
我慢できなくなるまでは市販薬などで対応し、症状が重篤化
してから来院される患者様は当院でも少なくありません。
そのような患者様が理学療法(リハビリ)の対象になった際
対応に難渋し、リハビリの長期化を招くことが多いです。
少しでも肩の動かし難さや痛みを感じた際には
「これくらいなら大丈夫だろう」とは思わずに
整形外科に来院されることをお勧めします。
○五十肩のみかた
肩関節は肩甲上腕関節のみで動くわけではなく胸郭を構成する
胸椎、肋骨、鎖骨、肩甲骨と連動する。
これらの一部の動きが悪くなると他の動きにも影響し結果として
大きな障害を生じさせることとなる。
そのため肩疾患をみる際には胸郭、肩甲骨と肩甲上腕関節は
連動すると考え診察する必要がある。
○五十肩の機能的分類
①大胸筋(前方)タイプ
・五十肩の約30%。
・保存療法に対する反応は良好。
・大胸筋停止部の圧痛、胸鎖・胸肋関節の他動運動痛が特徴。
・肩甲骨の他動関節可動域の制限は軽度。
・肩甲下筋と小円筋に圧痛と硬結を高頻度で認める。
・主に関節外因子の異常により肩甲上腕関節の拘縮をきたし、
関節内因子である関節包の関与は軽度。
②後方タイプ
・五十肩の約40%。
・前方タイプより保存療法に対する反応は不良。
・肩甲骨の下制、下方回旋、内転、後方傾斜の制限が
中等度以上みられ、肩甲骨の上方回旋を促すため
二次的に生じた腱板筋群のtightnessが強いタイプ。
・肩甲下筋と小円筋に圧痛と硬結を高頻度で認める。
③HSタイプ(hypermobile scapula:過度に動く肩甲骨)
・2011年の東日本大震災以降に被災地で急増したタイプ。
・発症に心因性要素の影響が考えられる。
・前方タイプより保存療法に対する反応は不良。
・他動的に過度に動く肩甲骨により肩甲上腕関節での
求心性維持が困難になり、関節内に炎症が惹起される。
・肩甲下筋と小円筋に圧痛と硬結を高頻度で認める。
・ストレスが誘因となり姿勢変化、呼吸状態の変化などが生じ、
胸郭運動が制限されることが発症の要因になると推測される。
○病態に合わせた治療戦略
・安静時痛・夜間痛がある期間
関節内の炎症を鎮静化させるために肩甲上腕関節へのステロイド
関節内注射を基本とする。
疼痛が高度の場合、ステロイドや弱オピオイドの内服を追加する。
・安静時痛・夜間痛が消失した後
前方タイプに対しては、大胸筋の柔軟性改善など関節外因子の
関節可動域改善を狙った徒手療法が中心となる。
後方タイプに対しては、胸郭と肩甲骨の関節可動域を改善させ
ることが重要となる。
HSタイプに対しては、肩甲骨と上腕骨の協調性を改善させる
ことが重要となる。