今回、院内勉強会にて脊椎脊髄疾患
について行ったので報告します。
●脊椎変形の診断
脊柱変形は正常アライメント(頸椎:前彎、胸椎:後彎、腰椎:前彎)
から逸脱したもので外観的、視覚的なものであるため比較的容易に
診断がつくこともあるが、疾患は多岐にわたる。
<側弯症の診断>
構築性、非構築性、後湾症、前湾症に分けられる。
【特発性側弯症】
・病態
側弯の中でも70%を占め最も多い。
脊椎の側弯以外には健康であり、
基礎疾患に神経筋疾患がなく
X線上に異常が認められないものとされる。
未だ解明されていないが、遺伝子が関与している
とされ、研究が進行中である。
思春期の女子に多くみられるが、幼少期に発症することも
重要である。胸椎の弯曲が大きくみられる。
・自然経過
治療法の選択(装具療法、手術)には自然経過を考慮する。
カーブの進行性が高い、患者がより若年であれば危険が大きい。
成長の指標は骨年齢、初潮年齢、Risser Signで評価される。
【神経筋性側弯症】
・病態
神経原性と筋原性に分類される。
神経原性には脳性麻痺や脊髄損傷などが含まれる。
筋原性には筋ジストロフィーなどが含まれる。
麻痺性側弯とも言われ、麻痺の部位から分けられる。
上位運動ニューロン:脳性麻痺、脊髄空洞症、脊髄損傷
下位運動ニューロン:ポリオ、脊髄性進行性筋萎縮症
特発性とは異なり、関節拘縮、股関節脱臼などの要素も
加わり複雑となる。筋力低下も考えられるが、麻痺のタイプ
で痙直性・弛緩性の相反するタイプがある。
長く大きいCカーブを呈し高度悪化症例では側弯や
後弯型に潰れた形態を示すことがある。
【先天性側弯症】
半椎、蝶形椎のように形成異常のタイプと
癒合椎のような分節異常のタイプと混合がある。
奇形椎が前後左右で成長の差を生じ各種変形が生じる。
タイプが多いため、視診・触診が重要となる。
【症候群性側弯症】
疾患に伴う側弯症として神経線維腫やMarfan症候群、
代謝性疾患として骨形成不全症などを挙げている。
多くの症候群性では皮膚カフェオレ斑など皮膚病変や
四肢関節の弛緩性、顔貌、結膜などに異常を認めることがある。
脊髄空洞症を伴ったキアリ奇形では、腹壁反射の異常が
典型的な所見となり、表在・深部腱反射を見ることも重要となる。
【成人脊柱変形】
いわゆる変形性側弯症といわれ、加齢変化により生じるものと
側弯症の変性変化の加味されたものおよび骨粗鬆症を基盤に
発生する老人性円背に代表される変性後弯症がある。
退行性変化に十分注意する必要がある。
●転移性脊椎腫瘍の診断
脊椎に原発する腫瘍は比較的稀である。一方、癌の遠隔転移巣
としては好発部位であり、疼痛や麻痺を生じ生活の質を著しく
損なう原因となる。
・診断の進め方
過程→問診、理学所見、画像診断、血液学的検査、生検となる。
【転移性脊椎腫瘍】
原発巣としては、肺癌、乳癌、前立腺癌、腎癌などの頻度が高い。
多くは、血行性転移であり、椎体の後方から椎弓根基部にかけて
好発し、骨破壊に伴ってX線上に欠損が認められることが多く、
Pedicle Signと呼ばれる。
ほとんどが溶骨性の骨破壊像を呈するが、前立腺癌や一部の乳癌では
造骨性の変化を認めることがある。