こんにちは、理学療法士の山形です。
今回の院内勉強会では「小児の下肢アライメント異常の診断と治療」について学んだため、報告させていただきます。
はじめに
小児の診療では「歩き方がおかしい」、「足(脚)の形がおかしい」といった親御さんからの訴えが多い。
1歳半から2歳ぐらいまではO脚や内また歩行に関する診察が多くなる。
小児期の生理的な下肢アライメントの変化
小児期の冠状面における下肢アライメントは経年的に変化することが正常である。
出生直後:O脚
~2歳:徐々にO脚は軽減
2歳過ぎ:X脚に転じる
3歳頃:X脚が最も強くなる
~6歳頃:徐々にX脚は軽減し成人と同じ約5°のX脚となる
水平面での変化は出生直後の内またから経年的に大腿骨前捻と下腿内捻が軽減し、8歳頃までにわずかな外またに転じる。
内また歩行
内また歩行は、歩行時につま先が内側に向く歩き方である。
歩行時の内または、正確さには欠けますが進行方向に対する足部の内旋角度である「foot progression angle:FPA」を観察し評価することができる(図1)。
(図1)FPA
内または下肢のいずれか(大腿骨、下腿骨、足部)、あるいは複数個所での回旋の結果である。
それぞれの内側への捻じれを把握することで責任部位を絞り込むことができる。
●大腿骨過前捻
大腿骨頚部の前捻角が強い場合に生じ、立位にて膝蓋骨の内旋偏位が特徴的である。
評価は股関節内旋外旋角度を用い、股関節内旋可動域の増大と外旋可動域の減少を確認する。
●下腿骨内捻
下腿内捻がある場合に生じ、立位にて膝蓋骨は中間位となる。
評価は大腿足角度「tight-foot angle:TFA」を計測する(図2)。
(図2)TFA
●内転足
勾玉状の足部内転がある場合に生じ、その多くは中足骨内転による内転足である。
評価は「grading severity of forefoot adductus」を用いて内転足度を表現する(図3)。
(図3)grading severity of forefoot adductus
鑑別が必要なO脚
生理的なO脚との違いは経時的な改善が得られにくいことである。
●Blount病(tibia vara)
・強いO脚を呈する。
・両下肢全長立位正面X線像における脛骨近位骨幹端内側嘴の骨折像が認められると診断は容易。
・補助的に、骨幹端骨幹角(metaphyseal-diaphyseal angle:MDA)を計測し、MDA15°以上で脛骨内反と判断されBlount病が疑われる。
・治療は2歳半から3歳であれば装具治療、4歳以上で脛骨内側骨端線の早期閉鎖を生じたものでは、癒合部切除術と矯正骨切り術の適応となる。
●くる病
・活性化以前の自然型ビタミンⅮの欠乏症である。
・薬物療法が確立されているため、見逃してはいけない疾患である。
・強いO脚に加え、両下肢全長立位正面X線像における大腿骨近位遠位および脛腓骨近位遠位の骨端線の開大と骨幹端の骨軟化、陥凹、広がりが認められる。
・小児内分泌科に検査と診断を依頼する。
・近年は親による食事制限や屋内に引きこもることによる日光不足も要因となりやすい。
●骨系統疾患
整形外科に来院する前(出生時など)に分かることがほとんどである。
☆骨幹端異形成症
・くる病に類似するため鑑別が必要である。
・両下肢内反変形、大腿骨近位遠位および脛腓骨近位遠位の骨端線の開大、陥凹、広がりが認められる。
・O脚の矯正治療に外側ウェッジの靴インサートを用いるが、大腿骨外反骨切り術を行うことが多い。
☆多発性骨幹端異形成症
・全身性に骨端の骨化遅延を認める。骨端だけでなく足根骨の骨化遅延を伴うことが多い。
・就学前に下肢アライメント異常を呈することは少ない。体重の増加とともにO脚あるいはX脚へ進行する場合がある。
・軟骨性骨端を変形させないために運動制限は必須となる。
・アーチサポートに外側あるいは内側ウェッジを併用する。
・骨端核がある程度大きく骨化している場合は骨端成長抑制術が行われる。
・骨端核が小さい場合は長下肢装具しか治療法がないこともある。
☆骨形成不全症
・膜性骨化の障害による骨脆弱性が特徴である。
・重症例では胎内骨折から出生直後に診断される。
・中~重症例では強いO脚を示す。
・両大腿および両下腿の内側に深い皮皺と内弯を呈する。
・下肢変形には伸張性ロッドを用いた矯正骨切り術によるアライメント再建術が行われる。
☆軟骨無形成症
・軟骨内骨化の障害による骨端線成長障害が特徴で四肢短縮型低身長を呈する。
・運動機能に問題はない。
・両下肢の短縮およびO脚、鞍鼻と前頭部突出、腰椎過前弯、三尖手を示す。足関節内反を伴うことが多く、特異な骨盤変形と大腿骨頚部短縮も特徴である。
・下肢短縮および変形に対して創外固定器を用いた変形矯正と脚延長が行われる。
さいごに
当院で診ることはほとんどないとのことでしたが、小児の生理的な下肢アライメントの変化と鑑別が必要な下肢アライメント異常の違いはしっかりと把握しておきたいと思います。
当院ではこのような勉強会を定期的に行っています。
今後も患者さんのために研鑽していきます。