はじめに
こんにちは、理学療法士の福田です。8月19日に行われた院内勉強会に参加しました。
今回のテーマは「骨粗鬆症性椎体骨折・装具治療」についてです。
骨粗鬆症椎体骨折とは?
骨密度が減って骨がもろくなり、骨折しやすい状態を骨粗鬆症といい、この骨粗鬆症が原因で脊椎(背骨)の骨折を生じた状態を骨粗鬆症性椎体骨折といいます。
尻もちやくしゃみ、不用意に重い物を持ち上げたりといった、ちょっとしたきっかけで自覚症状もないまま脊椎がつぶれてしまうことから「いつのまにか骨折」とも呼ばれます。
骨粗鬆症は日常生活動作や生活の質に影響するだけでなく、高い死亡率とも関連すると報告されています。臨床的に診断された椎体骨折(臨床VF:vertebal frac-ture)の5年後の生存率はおよそ28%であり、股関節や前腕の骨折よりも死亡率が高くなっています。したがって高齢者の生活の質と生命予後を改善するために骨粗鬆症を予防することは重要な課題になっています。
診断方法
骨粗鬆症の診断方法のひとつとしてSQ法を用います。側面から撮影したレントゲンを使用し、椎体の変形の程度に応じて4段階に分類するものです。
グレード0:正常
グレード1:軽度の骨折(mild)
グレード2:中等度の骨折(severe)
グレード3:高度の骨折(severe)
有病率
現在骨粗鬆症患者は1300万人を超えているといわれています。しかし自覚症状を伴わない骨折であることから医療機関を受診するのは約1/3といわれています。
椎体骨折は軽度なMild VFと高度なsevere VFに分類できます。
下記の表1にあるように、男女合わせた有病率はVF:21.8%であり、VFおよびmild VFは男性に多く、severe VFは女性に多い結果となっています。
男女ともに年齢依存性に有病率は高くなり、特に80歳以降の女性では過半数がVFを有しています。
表1 VFの有病率
A:VFの性・年代別有病率(%)
B:Mild VFとsevere VFの有病率(%)
障害
姿勢異常(腰が曲がってくる)によってバランス能力が低下し転倒率が高くなります。さらに心肺機能の低下、逆流性食道炎などの内臓疾患などを生じることもあります。
治療
椎体骨折に対する治療の基本は保存治療です。骨折後の脊椎はとても不安定であるため、骨折部の安定性を図ること、疼痛コントロールを行うことが重要です。
椎体骨折直後の疼痛は、一般に安静臥床と局所の固定(体幹ギプスや硬性コルセット、あるいは軟性コルセット)などで経時的に軽減し、受傷から1年後には8~9割の患者様の疼痛が軽減して受傷前の生活を送ることが出来るとされています。したがって、保存治療が初期治療には重要とされています。
装具(コルセット)
コルセットには硬性コルセット、軟性コルセットがあります。それぞれの特徴として、
硬性コルセット:装具そのものの機械的支持力で脊柱を支持・固定します。体の型を取って作成するため体幹にしっかりと密着し、支持性や制動性が高くなります。着用期間は約2~3か月になります。
軟性コルセット:ナイロンメッシュの生地と金属製の支柱で構成されており、正面はベルトで作られているため体形に合わせたサイズ調整が可能になります。腹圧による免荷効果で筋肉にかかる負担を軽減させ、間接的に腰を支持していきます。
コルセットを着用することによって、腰の可動性を制限し、変形の進行をできるだけ防ぎます。
また、コルセットが腹筋と背筋の代わりをし、腰、体幹が安定することで腰回りの筋肉の負担が減り、痛みの軽減へとつなげていきます。
硬性コルセットと軟性コルセットの治療効果
硬性コルセットは軟性コルセットと比較して、受傷後12週の段階で有意に圧壊の進行を抑制するも、24週、48週の時点では圧潰率に有意差を認めなかったとの報告もあります。
臨床的な観点からは受傷後12週間を装着期間とするならば、硬性コルセットと軟性コルセットの差はほとんどないと考えられますが、受傷直後の痛みを抑制するという点においては硬性コルセットの方が優れています。
基本的には受傷から初期には硬性コルセットを選択することが多いですが、患者様の状態によって軟性コルセットを選択する場合もあります。どちらを使用するかは患者様の状態や時期に合わせて選択をしていきます。
さいごに
今回は骨粗鬆症性椎体骨折・装具治療について学び、まとめていきました。 骨粗鬆症における椎体骨折は身近にありながら、自覚症状がない場合が多いため治療を受ける方が少ないです。骨粗鬆症は治療を行うことができますので、これを機に当院で検査をしてみてはいかがでしょうか。
当院はこのような勉強会を定期的に行っています。今後も患者様のために研鑽していきます。次回の投稿をお楽しみに!