「変形性股関節症診断の最前線」「関節唇損傷の診断」
について院内勉強会を行ったので、報告します。
「変形性股関節症診断の最前線」
<概要>
日本における変形性股関節症は、寛骨臼形成不全などに続発
する二次性股関節症が多いが、腰椎変性側弯症に伴うものや
臼蓋・大腿骨インピンジメント症候群も変形性股関節症の原因
となる病態として捉えている。
<身体所見>
・疼痛確認
「歩き始め」「歩行中」「長く歩いた後」「安静時」「夜間」など。
部位が「臀部」でなく「股関節」であり、「大腿直筋腱の付着部」
ではなく、「大腿三角」にあること。
・理学検査
Patrick test(股関節 屈曲+外転+外旋強制)が陽性、
伸展+外旋にてインピンジメントが生じ疼痛が増強を確認。
可動域制限、脚長差、大腿周径、日常生活動作、既往歴、スポーツ歴など。
・X線検査所見
関節裂隙狭小化
Roof osteophyte
Double floor
骨硬化像
骨嚢胞
日本人の変形性股関節症の多くが寛骨臼形成不全に続発するため、
パラメータとしてCE角、Sharp角、AHIを測定する。
臼蓋・大腿骨インピンジメント症候群は、近年若年者の股関節痛の
原因として注目されている。股関節屈曲の動作で寛骨臼の前縁と
大腿骨頚部前面の骨隆起が衝突することにより関節唇の損傷・寛骨臼縁と
大腿骨頚部前面の骨軟骨損傷・臼蓋後方の関節軟骨変性、そして最終的に
変形性股関節症を生じる。X線所見は、pistol grip deformityでピストルの
グリップのように見えるものがある。
そのほかに、CT検査、MRI検査がある。
「関節唇損傷の診断」
<関節唇の解剖と機能>
股関節の関節唇は寛骨臼縁の全周性に縁取るように存在し、下端は
寛骨臼横靱帯に連結し、寛骨臼を深くして大腿骨頭の被覆を拡大して
関節安定性を高めている。
関節唇の関節包側は血行が豊富であり、関節包に近い部位では損傷を
受けても治癒しやすい。関節面側に近づくにつれて血行が乏しくなる、
そのため関節内面での損傷は治癒しにくい。
関節唇には自由神経終末がみられ、疼痛感覚や固有受容感覚を有している。
関節液の潤滑を保ち、関節内面を除圧に保つことで軟骨保護の役割を担って
いる。腸骨大腿靱帯と協同して股関節外旋と前方移動を制御している。
<関節唇損傷の原因>
メカニズムとしては、大きく分けてinstability(不安定性)impingement(衝突)がある。
Instability:寛骨臼形成不全など
impingement:FAIであり、骨形態からcam typeとpincer type、
両者の異常を有するmixed typeに分けられる。
・寛骨臼形成不全における関節唇損傷
機械的負荷にさらされることにより肥厚や変形、断裂を生じて症状を呈するものであり、
進行すると変形性股関節症となる。
寛骨臼形成不全の90%に関節唇損傷の合併見られたとの報告もある。
正常では関節唇に歩行時の刺激下で股関節にかかる全負荷の1~2%を占めるが、
寛骨臼形成不全の場合は、4~11%まで上昇する。
・FAIにおける関節唇損傷
形態異常により生じる大腿骨と臼蓋縁の衝突によって生じる障害である。
「Cam impingement」
大腿骨頭から頚部の形態異常により股関節屈曲時に大腿骨頭の隆起部に
股関節唇が挟み込まれたり、外側からな内側に剪断力が生じることで起こる。
「Pincer impingement」
寛骨臼側の形態異常で関節唇が挟み込まれることで生じる。寛骨臼が後方に
捻じれている状態であったり、寛骨臼縁が前方へ張り出している状態などに
より衝突し生じている。
<関節唇損傷の診断>
・問診
特徴的な疼痛誘発動作として、あぐら、車の乗降、方向転換時など軽微な
日常生活動作で疼痛が誘発される。
・疼痛誘発テスト
前方から外側の損傷
Anterior impingement test(屈曲+内転+内旋)
開排
上方から後方の損傷
Posterior impingement test(伸展+内転+外旋)
開排
股関節90度屈曲位にて骨頭を臼蓋へ押し付けるストレスを与える。
Log roll test(仰臥位+伸展+内外旋を他動)などがある。