理学療法士の山形です。
院内勉強会にて「変形性膝関節症に対する患者教育・体重管理・運動指導」について学んだため報告します。
●はじめに
変形性膝関節症の患者数は、有痛者が約780万人、X線学的な変形性膝関節症は約2,500万人、40歳以上で有病率は55%、有症状者は1,800万人に達するといわれている。
変形性膝関節症を有していると要介護への移行リスクは約6倍あると指摘されている。
変形性膝関節症の治療目標は疼痛や腫脹、関節可動域制限などの症状を緩和・除去し、進行を阻止することで日常生活動作の障害を軽減させ、生活の質(QOL)を向上させることである。
その目標を達成するための変形性膝関節症治療の核心に位置づけられているものに、患者教育や体重管理および運動指導がある。
以下に患者教育や体重管理および運動指導の実際と有用性についてまとめていく。
〈患者教育〉
・患者に現在の病態と今後の進行過程について画像など用いて十分に理解してもらう。
・生活環境や職業や今後の目標を把握・勘案したうえで、治療目的と生活指導、保存的治療法および手術的治療法を説明するとともに、患者の病態を勘案して、それらの有効性と限界に関する情報を提供する。
・患者自らが治療の主体者となる意欲をもたせることが重要である。
〈体重管理〉
・膝関節に加わる負荷を減少させることは発症予防や進行抑制に必須である。
・BMIが25㎏/㎡を超えると発症リスクは約3倍上昇し、BMIが40㎏/㎡を超えると発症リスクは約30倍になると報告がある。
・6㎏減量すれば変形性膝関節症の疼痛軽減および機能改善を軽度得ることができる。
・BMIを1割減らせれば軟骨変性を遅らせることができるといわれている。
・2.4㎏の減量をすると7.5%の大腿四頭筋の筋力低下がみられることから、筋量の維持およびエネルギー消耗のための全身運動を勧める。
〈日常生活動作・様式の変更〉
・坂道歩行、階段昇降、長時間歩行、正座など膝関節に負担のかかる動作は避ける。
・階段は手すりを使用し上がる際は痛みのない健側から上がり、降りる際は患側からの二足一段とする。
・和式トイレは避けて洋式トイレを勧める。
〈運動指導〉
・膝に過度な負荷のかかる運動は病態を悪化させることをよく理解してもらう。
・大腿四頭筋は歩行に関与する重要な筋の1つであり、この筋力低下によって膝関節への負担が増加することになるため、大腿四頭筋の筋力訓練は重要である。
・患者には筋力の獲得には時間がかかり、効果がすぐにあらわれないことを十分に理解してもらう。
・歩行は1日3,000から始め、6,000歩を維持すべきという研究がある。歩きすぎは変形性膝関節症を助長するリスクが1.9倍あることが指摘されている。
・集団での運動療法より個別のほうが疼痛緩和や機能改善に有効であるといわれている。
・最良の運動方法とは何かについては期間や強度および頻度なども含め不明である。
●おわりに
今回は変形性膝関節症の患者さんへの関わり方について簡単ではありますがまとめました。
体重増加が原因であったり筋力低下が原因であったりと変形性膝関節症になった原因やその経緯は人それぞれであるため、今後も個別性の高い関わり、リハビリテーションを提供できるように日々研鑽していきたいと思います。
参考文献
MB Orthop.36(1):1-8,2023