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院内勉強会「胸郭出口症候群と他の末梢神経損傷・頸椎疾患の鑑別ポイント」について

こんにちは。理学療法士の小幡です。

先日、院内勉強会がありましたので、報告していきたいと思います。

 

テーマは「胸郭出口症候群と他の末梢神経損傷・頸椎疾患の鑑別」

についてです。

 

〇胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS

 以下TOS)の原因

 →TOSは血管原性(動脈性、静脈性)、神経原性に分類される

  動脈性1%

  静脈性5%

  神経原性90%以上

  ※日常診療で遭遇するTOSは両症状を有する症例も少なくない

 

TOSの症状・所見

 ・動脈性TOS

  →上肢の蒼白、脱力、疼痛などを生じることが多い

 ・静脈性TOS

  →上肢のうっ血から上肢のチアノーゼ、緊満、疼痛を生じることが多い

 ・神経原性TOS

  →上肢のしびれ、疼痛・脱力などを生じる。

   上位型:台5//7頚髄レベルでの障害

      (頸部~上腕外側、前腕橈側にしびれ、疼痛・脱力症状)

   下位型:第8頚髄/1胸髄レベルでの障害

  (頸部~上腕内側、前腕尺側、環・小指にしびれ・疼痛・脱力症状)

 

〇鑑別を要する外来診療での疾患

 ・尺骨神経麻痺

  →巧緻性運動障害、手内筋の萎縮と鷲手変形を生じる

   環指尺側から小指と前腕尺側の領域で感覚異常を訴える

   神経原性TOSの下位型(第8頚髄/1胸領域の障害)との鑑別は、

   特に重要

   肘部管症候群と尺骨管(Guyon管)症候群がある

 

 ・肘部管症候群とTOSとの鑑別

  →末梢部での症状は似ているが、肘部管での神経絞扼所見がない

   神経伝導速度検査において、肘上‐肘下間で運動・感覚神経伝導

   速度の遅延がみられない

 ・尺骨管(Guyon管)症候群とTOSとの鑑別

  →尺骨神経が障害をうけている尺骨管(Guyon管)より遠位に感覚

   障害と運動障害を認めること

   神経伝導速度検査により、障害部位の同定が可能

 

 ・手根管症候群(carpal tunnel syndrome:CTS、以下CTS)とTOS

  との鑑別

  →CTSの主症状は母指から環指橈側にかけてのしびれと疼痛、進行に

   伴う母指球の筋委縮による母指の対立運動の障害、手関節掌側部手根

   管上でのTinel徴候を認める。

   前腕の感覚障害部位の詳細な観察と手部の筋委縮の確認、症状誘発

   試験と神経伝導速度検査の結果からCTSTOSとの鑑別は可能。

 

〇頸椎疾患とTOSとの鑑別

 →頸椎症性脊髄症の症状としては、頸部痛の他に四肢のしびれや筋力

  低下、歩行障害さらに膀胱直腸障害がみられる。

  髄節症状として上肢のしびれとし、次いで手の巧緻性運動障害と

  痙性歩行が生じる

  錐体路障害として痙性歩行、深部腱反射の亢進、Hoffmann徴候

  陽性がみられる。

 

 →頚椎症性神経根症の多くの患者では後枝症状である肩甲骨への痛み

  から発症する。すなわち、C5C6では肩甲上部、C7C8であれば

  肩甲間部、さらにC8では肩甲骨部に痛みがみられる。

  進行すると上肢へ放散する疼痛やしびれが生じ、dermatomeに一致

  する範囲へ痛みが現れる。放散痛はC5で肩外側、C6で母指、C

  で示指や中指、C8であれば小指に出現する

  真の神経性胸郭出口症候群がT1を主体としたdermatomeの所見が

  多いのに比して、頚椎症性神経根症ではC8が多い。

 

 →頚椎症性筋萎縮症は上肢の筋委縮を主訴として、感覚障害や下肢

  症状が目立たない。Keegan型頚椎症とはぼ同義。

  脊柱管傍正中から椎間孔入口部での前角あるいは前根障害とされる。

  近位型はC5障害が主体であり、三角筋を中心に上腕二頭筋もしばしば

  筋力低下をきたす。(腱板断裂との判別に注意)

  遠位型はC8障害が主体。総指伸筋、長・短母指伸筋の筋力低下による

  下垂指がみられ、第一背側骨間筋と小指外転筋も障害される。

参考文献:整形・災害外科62:155-162,165-170