今回は、頚髄症とALSの鑑別について
院内勉強会を行ったので報告します。
○はじめに
筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)は全身の上位及び下位運動ニューロン
が変性・脱落する中枢神経難病のことで以下の症状が生じ、診断をうけて
から余命3~4年といわれています。
<症状>
・筋萎縮・筋力低下 ← 上肢:脱力、下肢:痙性歩行
・構音障害 ← パ・マ行が言えない
・嚥下障害
・呼吸障害 ← 脳梗塞では生じない
球麻痺(構音障害、嚥下障害)or 四肢症状 のどちらかで発症すること
が多く、比率は、1:2 とされています。
○その他の中枢神経難病との違い
・呼吸困難を呈し生命の危機に直面する。
・陰性徴候(現れない症状)がある。
→眼球運動障害
→膀胱・直腸障害
→感覚障害
→褥瘡
○ALS診断基準
鑑別は困難で診断基準を満たさないまま死亡する場合もあり、病理解剖
することで確定診断となるが、生前診断が困難な場合も少なくない。
○頚髄症との鑑別
多くの疾患を除外診断しなければならない。
血液検査
髄液検査
画像検査 ← 異常がなければ脊髄疾患は否定される。
神経生理学的検査
ALS患者のうち、60%に頚椎症もしくは腰椎症を認めたとの報告もある。
ALSは有病率10万人あたり7~11人と推計される稀少難病である。
○見逃さないポイント
ALSは全身に症状が生じる疾患であるため異常の広がりに注目することで
ある。診断上で脊髄症とALSの鑑別で重要なのは脳神経障害、構音障害、
呼吸障害の存在であり、これらを認めればALSを積極的に考えることが
重要である。