放射線技師の武田です。
4/26の院内勉強会”脊椎脊髄疾患”に参加しました。
今回はその中の”腰椎椎間板ヘルニア”についてまとめたいと思います。
☆腰椎椎間板ヘルニアの病態
椎間板変性を基盤として線維輪の後方部分が断裂し、髄核または線維輪の一部が後方に逸脱し神経根を機械的に圧迫、またはそれにより炎症が引き起こされ神経根症が発症する。
・好発高位⇒L4/5,L5/S1
・好発年齢⇒20~40歳代
〇contained type(ヘルニア塊が後縦靭帯を穿破していない)
protrusion:線維輪を穿破していない
subligamentous extrusion:線維輪を穿破している
〇noncontined type(ヘルニア塊が後縦靭帯を穿破し脊柱管内に脱出)
transligamentous extrusion:脊柱管内にヘルニアの一部が脱出
sequestration:脊柱管内にヘルニアが遊離脱出
・脊柱管内ヘルニアではヘルニア高位より1椎体下の椎間孔から出る神経根が圧迫される。(L4/5ではL5神経根)
・外側ヘルニアではヘルニア高位より1つ上位の神経根が圧迫される
(L4/5ではL4神経根)
☆腰椎椎間板ヘルニアの症状
〇腰痛および下肢への放散痛が急性に発症することが多い
〇障害神経根領域に沿った知覚障害やしびれ、脱力感を伴うことがある
〇放散痛の分布領域から障害神経根をおおよそ予想することができる
・L2 or L3神経根障害では鼡径部~大腿部の放散痛を認める
L3⇒膝前面の疼痛を認めることが多い
・L4,5 or S1神経根障害では臀部~大腿後外側or後面の放散痛を認める
L4⇒下腿内側の疼痛を認めることが多い
L5⇒下腿外側の疼痛を認めることが多い
S1⇒下腿後面の疼痛を認めることが多い
※放散痛の分布領域は個人差が大きく、それのみではヘルニア高位の特定までには至らない
☆神経学的所見
〇下位腰椎椎間板ヘルニア(L4/5,L5/S)では下肢伸展挙上試験(straight leg test:SLRT)が陽性となる(図3)
・SLRTの強弱と臨床症状は正の相関関係にある
※神経根固有の緊張が影響するため、若年者では強陽性になることが多く、高齢者では陰性になることが多い
〇上位腰椎椎間板ヘルニア(L1/2~L3/4)では大腿神経伸展試験(femoral nerve stretching test:FNST)が陽性となる(図4)
※このテストも高齢者では陰性になることが多い
〇Kempテストも陽性となる症例が多く、患側への後側屈で下肢への放散痛が誘発される
※Kempテストとは?
座位または立位で行う。腰椎を斜め後方に倒し、そのまま回旋する。これを左右行う。
〇下肢放散痛の領域に加え、運動障害、知覚障害、深部腱反射低下を認める症例は、より高率にヘルニア高位を予測することが可能である(図5)
当院ではつま先歩き、踵歩きを患者にしてもらう
・つま先歩き⇒腓腹筋(S1)
・踵歩き⇒前脛骨筋(L4,5)
☆画像所見
[単純X線撮影]
〇腰椎正面・側面・前後屈機能撮影を行う
⇒アライメントおよび不安定性の正確な評価のため立位での撮影が望ましい
〇仙骨・骨盤腫瘍や股関節疾患を鑑別するため、骨盤正面撮影or股関節を含めた腰椎正面撮影を行う
〇椎間腔狭小化とヘルニアの発生に明らかな関連はなく、単純X線のみで椎間板ヘルニアの診断は不可能である
[MRI]
〇ヘルニアの診断に最も有用であり、椎間板の変性度やヘルニアの脱出形態を確認できる
〇横断像(axial)は椎体高位まで、傍矢状断像(parasagittal)は椎間孔外までスライスする
⇒椎体高位まで脱出・遊離するヘルニアや、椎間孔内外に存在する外側ヘルニアの検索を行う(図6)
A・B:75歳、女性、椎間孔内ヘルニア症例
⇒T2強調横断像(A)でL3/4椎間の左側に椎間孔内ヘルニアを認める
⇒T2強調傍矢状断像(B)でL3/4椎間孔内にヘルニアが存在し、椎間孔内の脂肪組織の消失を認める
C:71歳、男性、椎間孔外ヘルニア症例
⇒T2強調横断像(C)でL4/5椎間の右側に椎間孔外ヘルニアを認める