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院内勉強会「手根管症候群の診断と治療」「肘部管症候群の病態と治療」

●はじめに

こんにちは、理学療法士の佐野です。2月2日に行われた院内勉強会に参加しました。
今回のテーマは「手根管症候群の診断と治療」「肘部管症候群の病態と治療」についてです。

●手根管症候群とは?

 手根管症候群
 手根管は手根骨と屈筋支帯(横手根靭帯とも呼ばれる)にて構成されるトンネルのことを指します。手根管内部には腱や神経などが存在しています。(図1参照)これら腱や神経が圧迫されることにより疼痛やしびれ、感覚障害が起こるものを総じて手根管症候群といいます。手根管症候群は整形外科で目にすることが多く、発病率は女性が男性の3.8倍と女性に多く発病します。特に更年期である50代の発症がピークであることから女性ホルモンの関与や手をよく使う人、妊産婦に多くみられます。

   図1 手関節部での横断面

 主な症状と評価
 初めは夜間痛から始まり、日常化すると正中神経支配領域のしびれや感覚障害が起こります。(図2)

図2 手根管症候群により生じる知覚障害の範囲 

 夜間痛の段階で手を振ることによって症状が軽快することがしばしばあり、これをFrick signといいます。更に病態が進んでいくと母指球筋の萎縮や母指対立運動障害がみられるようになり、しびれや感覚障害の訴えは軽快していく傾向にあります。母指対立運動障害が進むとボタンのかけにくさやコインがつまみにくくなるなどの症状の訴えがあります。この時の母指対立運動評価としてPerfect O signが作れるかを確認します(図3)

図3 Perfect O sign(左:正常 右:手根管症候群)
 手根管症候群では母指の対立ができず、円を作れないので楕円となる。

 症状誘発テストではほかにも手関節を最大1分間掌屈させたときに症状が出てくるPhalen testや手根管近位を叩打すると疼痛が出てくるTinel徴候の評価が挙げられます。(図4)
 
 図4 手根管近位の叩打によるTinel徴候確認

●肘部管症候群とは?

 肘部管症候群
 肘部管とは肘の内側(小指側)に存在しておりここには尺骨神経という小指、環指の感覚をつかさどる神経が通っています。肘部管は手根管に比べると細く尺骨神経のみが存在しています。
 肘部管症候群とは靭帯(Osborne靭帯)の絞扼や変形性関節症(OA)、肘周囲の骨折等により起こる絞扼性神経障害のことを言い、手根管症候群に次いでよく見られるものでもあります。手根管症候群が女性に好発しやすいのに対し、肘部管症候群では女性での発症は稀であるとされています。発症原因の内訳を見ても男女では差があるとされています(図5)

     図5 肘部管症候群発症の原因内訳

 主な症状と評価
 症状の訴えとしては大半が尺側の感覚障害、しびれ、細かい指の動きに関する巧緻運動障害が挙げられます。これらの症状はほかの疾患でも起こることが多く、綿密に評価を行う必要性があります。感覚障害に目を向けると肘部管症候群の場合小指と環指尺側1/2で掌背側に出現します。掌側のみに出現する場合はGuyon管症候群を考えます。
 簡単な評価に関しては他にも、肩関節最大内旋位かつ外転90°を10秒間行い症状の出現の有無をみるもの,肘部管の所を叩打し症状の出現があるかみるTinel様徴候があります。

●治療について


 手根管症候群
 手根管症候群では状態に合わせて保存療法と手術療法の選択がされます。保存療法の目的としては、局所の安静による滑膜炎を抑制し神経の圧迫症状を緩和するところにあります。ステロイド注射や夜間でもサポーターやシーネ固定を行い、手の酷使を避けることが重要とされています。
 症状が進み、母指球筋萎縮の症状がみられる場合は手術療法の適応となり、横手根靭帯の切離による神経圧迫の解除が期待されています。また母指対立運動に障害をきたしている場合は、腱移行による母指対立再建術が検討されます。

 肘部管症候群
 肘部管症候群においても保存療法、手術療法の選択があります。しかし手根管症候群とは異なり知覚検査時に他覚的異常がみられる場合は、保存療法を行っても症状の進行がみられるとされていて肘部管症候群の診断が下ると手術療法を行うケースが多くなっています。手術としては肘部管を広げるものや尺骨神経を剥離させ移動させる皮下前方移動術が挙げられます。

●さいごに

 今回は「手根管症候群の診断と治療」「肘部管症候群の病態と治療」について学び、まとめていきました。
 どちらの疾患に関しても状態によって症状の出方が変わってくるというものでした。そのため異変を感じて放置するのではなく安静を心掛け、早めに医療機関へ受診することで病態の悪化を防ぐことができると考えます。
 好発しやすいとされている年齢や性差、注意するべきポイントを押さえていき、日常生活への制限が出ないよう心掛けていくのも大切だと感じます。
 「このくらいなら別にいいか」「気になるけどまあ大丈夫かな」と思わずに早めに対策することが大切です。
 

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。