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院内勉強会「大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の画像診断と身体所見の取り方」

理学療法士の山形です。
今回は「大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の画像診断と身体所見の取り方」について学んだため報告します。

〈はじめに〉
大腿骨寛骨臼インピンジメント(Femoroacetabular impingement:以下,FAI)は大腿骨近位の骨性隆起(大腿骨頸部が太くなる)を中心とした骨形態異常(cam type)寛骨臼の過被覆を中心とした骨形態異常(pincer type)に、股関節運動が加わることによって発生するインピンジメントであり、症状・臨床所見・画像所見の3つが揃うことで診断される。
cam type変形とpincer type変形、そして両者を併せ持つcombined type変形に分類される。

cam typeのFAIは無症状のアスリートに多く認める骨形態異常であり、発育期に大腿骨近位骨端線に過剰な負荷がかかることにより発生することが示唆されている。

〈画像診断〉
単純X線画像は骨性形態の評価に必須であり、寛骨臼の被覆状況や関節症性変化、FAI形態の有無などを検討できる。

撮影方法
・股関節正面像:寛骨臼被覆、寛骨臼の前捻、大腿骨頸部の形態異常の評価など。
・股関節側面像:大腿骨頸部の形態や前捻の評価。
・false profile像:寛骨臼前方被覆や前方の関節症変化の検討。
・Dunn像:仰臥位で股関節外転20度の状態で徐々に屈曲することで、大腿骨頭頸部移行部の骨形態やbumpの局在を前方から側面上方にかけて順に評価が可能。
など

cam type変形の診断では、大腿骨頭から頚部に移行する部位の前方や外側への膨隆や曲率の変化が重要で、股関節正面像におけるピストルグリップ変形(下図左)や股関節側面像やDunn像におけるα角>55度(下図右)が診断基準として汎用されている。



pincer type変形の診断では、大腿骨頭に対して寛骨臼の被覆が過剰であることが診断に重要で、股関節正面像におけるlateral center edge角(LCE角)での過剰被覆(LCE角>40度)やacetabular roof obliquity(ARO)>0度、crosss⁻over signなど組み合わせる(下図)。



 〈身体所見〉
FAIでは鼡径部に疼痛を訴える症例が多い。ドーハ分類では、内転筋関連、腸腰筋関連、鼡径部関連、恥骨関連鼡径部痛の疾患概念の診断は、圧痛と抵抗時痛のみをもって行うことが特徴的である。

今回は抵抗時痛の確認方法のみ図を用いながら記載する。

内転筋関連鼡径部痛(adductor⁻related groin pain)
内転筋の抵抗時痛は股関節伸展位(下図左)および屈曲位で行う(下図右)。抵抗時痛の有無とともに筋力低下の評価も行うことが望ましい。



腸腰筋関連鼡径部痛(iliopsoas⁻related groin pain)
腸腰筋の抵抗時痛は、股関節屈曲90度の座位から被検者に股関節を屈曲させて行う(下図)。



鼡径部関連鼡径部痛(inguinal⁻related groin pain)
鼡径部関連鼡径部痛は抵抗時痛ではなく、腹筋動作での腹圧の上昇による疼痛の誘発などを確認する(下図)。



恥骨関連鼡径部痛(pubic⁻related groin pain)
恥骨関連鼡径部痛は圧痛のみをもって診断する。前面からは恥骨結合だけでなく恥骨上枝に沿って評価するが、恥骨の下方や後方を含め圧痛が最も強い部分を同定することも必要である。

股関節関連鼡径部痛(hip⁻related groin pain)
ドーハ会議では股関節関連鼡径部痛の評価には関節可動域の測定とともにFABERtestおよびFADIRtest(下図)の施行を推奨している。



FAIの診断にはanterior impingement testとposterior impingement test(下図)が必須である。



〈さいごに〉
今回はFAIの画像診断と身体所見の取り方について学んだ。恥骨関連鼡径部痛が内転筋群関連鼡径部痛と併存することが多いなど複数の要因が絡みあっている場合もあるため、今回の身体所見の取り方を参考にして行い効果的なリハビリを選択していきます。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。