●はじめに
こんにちは、理学療法士の秋葉です。8月5日に行われた院内勉強会に参加しました。
今回のテーマは「小児における上腕骨骨折」についてです。小児期の肘関節周囲骨折で頻度の高い、“上腕骨顆上骨折”と“上腕骨外側顆骨折”について学びました。
●小児上腕骨顆上骨折の特徴
上腕骨顆上骨折とは、肘関節の少し上(肩側)の部分の上腕骨骨折のことです。この部分は骨が薄く脆弱であり、小児の肘関節周囲骨折のうち約60%を占めています。5歳前後の男児に多く、転倒や高いところからの転落で受傷することが多いです。
骨折の度合いによって、以下のように分類されます。
顆上骨折は、自家矯正(骨折後のずれが自然と治っていくこと)が起きにくいです。そのため、初期の整復が不十分だった場合などには、内反肘(上腕の軸に対して前腕の軸が内側を向いている状態)となる可能性があります。(小児の場合、骨の成長に伴って骨癒合後に内反肘に変形する可能性もあります。)
そのため、初期治療での正確な整復が重要であり、わずかでも転位(骨折により、骨が本来の位置とずれること)がある場合、手術適応となることが多いです。(転位がない場合などは、一定期間のギプス固定に加えて三角巾などで腕の動きを制限する方法が選択されることが多いです。)
転位があっても、レントゲン画像では明らかに認められない場合もあります。その際には怪我をしていない方のレントゲン画像との比較が必要になります。
また、顆上骨折は血管や神経の損傷を合併していることが多いため、循環障害や神経障害にも注意が必要です。これらの症状がみられる場合にも、手術適応となります。
●小児上腕骨外側顆骨折の特徴
上腕骨外側顆骨折は、上述の顆上骨折よりもさらに肘関節に近い部分の上腕骨骨折であり、顆上骨折に次いで頻度の高い骨折です。発症年齢や受傷起点も顆上骨折とよく似ています。
骨折の度合いによって以下のように分類されます。
外側顆骨折は関節内骨折(骨折が関節の内部に及ぶ骨折)であるため、関節液の流入などにより偽関節(骨癒合が不十分で不安定な状態)になりやすいです。そのため顆上骨折の場合と同様に、わずかでも転位があれば手術適応となることが多いです。
外側顆骨折で偽関節を生じた場合、肘関節外側部の成長が阻害され、外反肘(上腕の軸に対して前腕の軸が外側を向いている状態)となります。この外反肘を放置すると遅発性尺骨神経障害につながり、指の細かい動きや感覚が鈍くなり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
●さいごに
今回は小児における上腕骨骨折について学び、まとめていきました。小児期に多くみられる骨折の種類や、治療方法の選択および考えられる後遺症について理解を深めることができました。
骨癒合後に内反肘などの変形が残ることによって日常生活に支障が出る場合など、再度矯正手術が必要になる可能性もあるため、初期の診断および治療選択がとても重要となることがわかりました。
当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。