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院内勉強会「妊娠後骨粗鬆症」

はじめに

こんにちは、放射線技師の武田です。

2/4に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は“妊娠後骨粗鬆症”についてまとめたいと思います。

 

 

 

そもそも骨粗鬆症とは?

 

骨粗鬆症とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。

日本には約1000万人以上の患者さんがいるといわれており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。



【症状】
骨粗鬆症になっても、痛みはないのが普通です。
しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折脆弱性骨折しやすくなります。

骨折が生じやすい部位は、せぼね(脊椎の圧迫骨折)手首の骨(橈骨遠位端骨折)太ももの付け根の骨(大腿骨頚部骨折)などです。



【原因と病態】
からだの中の骨は生きています。同じように見えても、新たに作られること(骨形成)と溶かして壊されること(骨吸収)を繰り返しています。(骨代謝

骨粗鬆症は、このバランスが崩れることでおこり、骨がスカスカになってきます。
骨粗鬆症は圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。

※「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)より抜粋

 

 

 

妊娠後骨粗鬆症とは?

 

通常の骨粗鬆症は閉経後の女性や、高齢者に多くみられます。

妊娠後骨粗鬆症とは、若年女性が妊娠期または授乳期に骨粗鬆症となり、骨折を起こしやすくなる比較的まれな疾患です。

妊娠・授乳期間中は母体から胎児へ大量のカルシウムを供給するため、母体の骨からカルシウムが失われてしまうのが原因とされています。

典型的には、分娩直後~産後6カ月までに腰・背中の痛みを主訴として発症し、主に椎体の脆弱性骨折を伴います。

妊娠後骨粗鬆症は一時的な状態であり、離乳後に回復していきますが、その期間に骨折をした場合には、骨の変形などの後遺症が永続する可能性があるので注意が必要です。

 

 

 

妊娠後骨粗鬆症となる原因

 

〇妊娠中の栄養 カルシウムについて

平均的な胎児は生まれるまでに30g(30000mg)のカルシウムを必要とし、その80%は妊娠末期(妊娠28週以降)に蓄えられます。

 

・妊娠末期には100~150mg/kg/日のカルシウム

・分娩直前の6週間には300~500mg/日のカルシウム

 

これらの量を胎児に供給する必要があります。

このカルシウム需要の大部分は、早ければ妊娠12週から始まる腸管からのカルシウム吸収率の増加により賄われます。


※女性のカルシウムの摂取量について
18〜29歳の女性では食事摂取基準の推奨量が661mg/日にも関わらず、わずか348mg/日しか摂取できていないのが現実です。
また、30〜49歳女性では660mg/日の推奨量に対して、摂取量は397mg/日と18〜29歳よりも多少摂取できているものの、推奨量に達していません。

※妊娠中も出産後もカルシウムを十分に | 食べるプレママの栄養 | ほほえみクラブ 育児応援サイト (meiji.co.jp)より抜粋

 

⇒妊娠中はカルシウム吸収率が増加しますが、そもそも摂取量が足りていないので、しっかり摂取することが重要です。

 

 

〇妊娠中の骨代謝の変化

からだの中の骨は、新たに作られること(骨形成)と、溶かして壊されること(骨吸収)を繰り返すことで、より良い状態に保とうとします。
この“作る・壊す”のサイクルを骨代謝といいます。

妊娠中は胎児へのカルシウム供給の一部を、自らの骨からカルシウムを取り出して賄おうとします。

骨吸収が亢進する

 

骨の材料であるカルシウムが失われていくので、骨は弱くなっていきます。

骨の丈夫さは骨密度(ある範囲に含まれる骨の量  g/㎠)を指標とします。

とある研究では妊娠前、分娩後の骨密度を比較したとき…

・腰椎  1.8%↓

・大腿骨 3.2%↓

・全身  2.4%↓

・手首  4.0%↓

 

それぞれ骨密度が減少していたという結果があります。

 

 

〇授乳が骨代謝に及ぼす影響

正常新生児が必要とするカルシウムは、妊娠末期の胎児よりは少なく30~40mg/kg/日とされています。

授乳によって新生児にカルシウムを供給することで、母体からは約210mg/日のカルシウムが失われます。

6カ月齢までの新生児の栄養を母乳のみで賄おうとすると、妊娠全期間9カ月の約4倍のカルシウムを供給しなければいけません。

しかし、分娩後は腸管からのカルシウム吸収率が元に戻ってしまうため、食事からのカルシウム摂取量を増やしても足りず、供給するカルシウムの大半は母体の骨から賄われます。

骨吸収が大幅に亢進する

 

骨吸収が大幅に亢進することで、3~6カ月の授乳期間中に5~10%、毎月1~3%の骨を失います。

閉経後女性が平均して毎年1~2%の骨を失うとされているので、約10倍の早さで骨が減少してしまうと言えます。



妊娠後骨粗鬆症の治療


離乳とともに急速に骨吸収の抑制、骨形成の促進が起こり、6~12カ月かけて妊娠前の骨の状態に戻ります。

ほとんどの女性は妊娠・授乳期の骨密度低下が問題になることはありませんが、妊娠前に骨密度があまり高くなかった場合に、妊娠・授乳による骨密度低下による脆弱性骨折を起こしてしまうと考えられています。

 

〈若年女性の骨密度が低い原因〉

・低栄養

・成長期の栄養不足⇒無理なダイエットなど

・遺伝

・多産

・病気   …など

 

 

〈治療の流れ〉

〇診察

痛みがあって来院される方がほとんどなので、痛みの部位、きっかけ等の問診を行います。

 

〇検査

骨に異常がないか確認のため、X線撮影を行います。

妊娠中⇒被ばくに配慮して撮影を行います。

授乳中⇒X線による影響はありません。

 

〇治療
・骨折を認めない
痛み止めの薬、注射、バンドやサポーターで固定、リハビリ等で痛みを取る治療を行います。

 

・骨折を認める
骨折の治療のため、ギプス・コルセットでしっかり固定します。
骨折の症状が落ち着いたら、骨密度検査を行います。
骨密度が低かった場合は、薬を使って骨密度を上げて、次の骨折が起こるのを予防します。
授乳中の場合は、十分な説明のうえで授乳の中断を指示します。
定期的に骨密度をチェックし、一定水準まで回復すれば治療終了です。

 

 

 

さいごに

 

今回は妊娠後骨粗鬆症について学び、まとめていきました。

当院では骨粗鬆症治療を積極的に行っているため、放射線技師である私も骨密度検査を通じて多くの患者様と関わります。

今回の勉強会で骨粗鬆症自体を学びなおす良い機会になったと思います。

私は直接患者様の治療に関わるわけではありませんが、患者様との会話のなかで今回学んだ知識が治療の不安などの解消につながればと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。