●はじめに
こんにちは、理学療法士の森田です。
今回の院内勉強では「成長期投球障害の特徴,診断と治療」について参加させていただきましたので報告します。
成長期における肩関節の投球障害は…
関節唇や腱板といった軟部組織(筋肉・靱帯など)ではなく,骨成熟過程に存在する骨端線および骨端核に生じることがほとんどである。
成長期でも病態診断のプロセスは成人と変わらず,身体機能評価から始まり,疼痛発生の道筋を考察することである。
●上腕骨近位骨端線障害
成長期で最も多くみられ,上腕骨の近位骨端核は3つ(骨頭部,大結節,小結節)の癒合体である。3-5歳までに癒合して骨端線が明瞭となる。この骨端線は16-19歳で閉鎖するが,それまでに長軸成長の80%を担うと言われている。
骨形態の変化として,骨頭の頚体角および後捻角は年齢とともに減少していくが,投球動作の反復により減捻の進行を制限させ,10歳以前に既に生じていると言われている。
●骨端線障害の発生
骨端線は,組織学的に骨端側より静止細胞層,増殖細胞層,肥大細胞層,石灰化層の4層に分類されている。
骨組織と比較すると骨端線部は外力に脆弱性があり,損傷を受けやすい。また,成長スパート時期にはその脆弱性が増すと言われている。
発生機序は,コッキング期に外旋位で保持されていたものが加速期で急激な内旋運動に転じることで回旋ストレスが加わることが要因であると報告している。ボールリリースからフォロースルー期にかけて牽引ストレスが大きく加わるが影響が一律でないことから回旋ストレスの方が大きく関与していると考えられる。
牽引力<回旋力
●診断
◇症状
徐々に投球時・後の肩痛が主訴。小・中学生に多く発生。慢性的に進行していた病態に突発的な外力が加わり急性発症したものとして考えられる。しかし,中には1回の投球で発症し,投球不能になる事もある。
◇理学所見
上腕骨頚部の圧痛,肩関節最大屈曲,外転外旋位の強制時痛および抵抗下での外転や内旋運動で疼痛を認める。また,肩甲胸郭関節機能低下や肩関節後方拘縮に伴う内旋可動域の減少を生じている場合がほとんどである。
<機能評価として>
肩甲骨アライメント(SSD,Wingingなど)
CAT(combined abduction test)
HFT(horizontal flextion test)
EET(elbow extension test)
EPT(elbow push test)
<この他にも>
HERT(Hyper External Rotation test)
Impingement
Loose前・後・下
SSc(肩甲下筋)
ISP(棘下筋)
SSP(棘上筋)
◇画像所見
●治療
基本的には,No throwによる保存的治療にて改善が見込まれる。
早期より理学療法士が介入し,全身的な運動機能評価を行い,損傷部位のみならず体幹・下肢機能の向上改善や投球フォームの改善指導も含め完全復帰へ。
●その他
稀に関節窩骨端核障害や関節窩離断性骨軟骨炎などの肩甲骨側の損傷による障害もあるため,これらを踏まえて診断する必要がある。
●さいごに
成長期の投球障害では,肘関節部の障害が多く報告されているが,肩関節にも過剰なストレスを加わることも少なくない。また,上肢だけでなく体幹や下肢機能の関与も大きいとされているため,全身的な身体機能を維持していくことが重要である。
当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。
今後の投稿も楽しみにしていてください。