皆さん、こんにちは! 理学療法士の小幡です。
先日、「女性アスリート外来の現状と課題」について院内での勉強会がありましたので、まとめていきたいと思います。
はじめに
近年、女性アスリート特有の健康問題が注目されています。
特に、女性アスリートの三主徴である、①利用可能エネルギー不足(low energy availability:LEA) ②視床下部性無月経 ③骨粗鬆症が、アスリートのコンディションや生涯の健康に影響を及ぼすため、早期に適切に介入することが重要になってきます。
女性アスリート外来の現状
東京大学医学部付属病院の女性診療科・産科における受診者の内訳は以下のようになります。
競技レベル別で見ると、国際大会・全国大会レベルの選手の割合が高く、
競技種目では、陸上中・長距離の選手が最多で、
18~22歳の年齢の割合が高い傾向にあります。
女性アスリートの三主徴について
女性アスリートは①利用可能エネルギー不足(low energy availability:LEA)②視床下部性無月経 ③骨粗鬆症が主にみられ、この三主徴の始まりは利用可能エネルギー不足が原因としています。
- 利用可能エネルギー不足(LEA)
利用可能エネルギー(energy availability:EA)は体重から脂肪組織の重量を差し引いた除脂肪量(fat free mass:FFM)1kgあたりのエネルギー(kcal)で求められます。
LEAは、30kcal/kg除脂肪量/日未満と定義されており、アメリカスポーツ医学会は、(1)成人ではBMI17.5以下,(2)思春期では標準体重の85%以下,(3)1か月の体重減少が10%以上を挙げているので、このような状況にならないように、指導者の理解を得ることも今後の課題になります。
- 視床下部性無月経
LEAの状態になると、黄体ホルモン(luteinizing hormone:LH)の律動的な分泌が抑制されてしまい、視床下部性無月経になってしまいます。
この状態に至るには、(1)慢性的な低体重,(2)短期間での急激な体重減少,(3)運動負荷の増強の3つのパターンがあります。
無月経の診断の際には、身長、体重、トレーニング量・強度の変化などを確認したうえで、血中LH、卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone:FSH)、エストラジオール(E2),プロラクチン、甲状腺機能、テストステロンを評価します。その中でも、LH、FSH、E2ともに低値であれば視床下部性無月経の可能性が高いと言えます。
- 骨粗鬆症
女性の最大骨量を獲得する時期は、20歳ころで、それ以降の増加は乏しくなります。
1年間の骨量増加率は12~14歳の中学生の時期に最も高いです。10代での長期間にわたる無月経や低体重は、適切な骨量の獲得を阻害し、障害の骨の健康に影響が出る可能性があります。
骨粗鬆症や低骨量の状態は、競技生活中であれば、疲労骨折のリスク因子となり、高齢期には骨折による寝たきりのリスクとなってきます。三主徴のうち、一つの疾患を有するアスリートは疲労骨折の障害リスクが2.4~4.9倍、三つを有するアスリートでは6.8倍リスクが高くなることが報告されています。
今後の課題
女性アスリートの健康問題に取り組むあたり、①アスリート自身に対する教育・啓発 ②指導者・保護者への啓発 ③女性特有の健康問題が起きたときに受診できる体制の整備 ④日本人アスリートのエビデンス構築などが今後の課題となってきます。
最後に
私自身、女性アスリートに関わることは現状ほとんどありませんが、女性がスポーツで活躍されている昨今、男性だから知らなかったでは済まないことではあると感じます。
またアスリートに関わらず、細身の体を手に入れるために過度な食事制限をしてしまい、体調を崩してしまう方もいますので、そういった方へのアドバイスにつなげられる内容であったので、大変ためになる内容でした。
今後も治療などに活かしていけるようにしたいと思います。ありがとうございました。