先日、院内での勉強会がありましたので、まとめていきたいと思います。
テーマは「運動器の健康と栄養」でした。
〇サルコペニア対策における栄養と運動の重要性
Ⅰ.サルコペニア(sarcopenia)とは
→筋肉量のみならず身体機能や筋力も低下した状態
一次性(加齢以外の要因がないもの)、二次性(身体活動両の低下
(廃用)の要因や疾患による要因ならびに栄養不良による要因)とに
分類できる
- 筋肉量の評価
impedance analysis(BIA)法を用いる。両者どちらかにより四肢の
各々の筋量を測定し、その合計(㎏)に対して身長(m)の二乗を
除したskeletal muscle index(SMI)を求め、筋量を測定する。
DXA(男性7.0㎏/㎡未満、女性5.4㎏/㎡未満)
BIA(男性7.0㎏/㎡未満、女性5.7㎏/㎡未満)
- 筋力の測定
男性26㎏未満、女性18㎏未満
- 身体機能の測定
男女問わず0.8m/sec以下が基準値。
2.高齢者の特徴
→加齢に伴い筋肉量および筋力は低下することが知られ、
その影響は下肢に大きい。
筋肉量が低下する主な要因として、一次的な加齢に伴う
要因と二次的な廃用性の要因が考えられる。
→高齢者の食と栄養摂取の特徴として、
・毎日同じような食事をする
・1日および1回の食事摂取量が少なく、欠食することもある
・今まで慣れ親しんだ食物嗜好や食習慣に摂食が左右される
・慢性疾患・薬物服用・咀嚼・嚥下障害などにより、
・食欲の低下をきたしている
さらに高齢者にみられる栄養不足はタンパク質エネルギー栄養
不足(protein energy malnutrition;PEM)の状態をきたすこと
が多い。
Ⅲ.整形疾患とサルコペニア
→人工股関節全置換術および大腿骨近位部骨折患者にて筋肉量
低下者が多く、特に大腿骨頸部骨折ではサルコペニア有病率
が多かったと報告されている。
さらにサルコペニアは転倒や骨折リスクが多いことも報告
されている。
Ⅳ.サルコペニア肥満
→肥満およびBMIが標準域内であっても患っていることがあり、
サルコペニア肥満と称される。
SMIの減少とBMIまたは体脂肪率またはウエスト周囲長の
増加で操作的に定義される。
骨格筋量の減少と体脂肪の増加が必要。
Ⅴ.サルコペニアへの介入
・運動介入
→筋発揮張力維持スロー法(low-intensity resistance exrcise
with with slow movement and tonic force generation
;LST法)が効果的である
・栄養介入
→タンパク質の摂取が重要。さらにビタミンÐも重要で、
血中濃度が低下すると身体機能の低下をきたすことが
知られている。
・運動+栄養療法(併用療法)
→運動に加えてアミノ酸を与えた場合には、さらに筋タン
パク質合成が刺激され、分解は抑制の方向に働くため、
強い筋タンパク質の同化作用を引き起こす。そのため
併用療法は筋肉量および筋力・身体機能の改善に有用である。
Ⅵ.リハビリテーション栄養
→全人的評価と栄養障害・サルコペニア・栄養素摂取の過不足の
有無と原因の評価、診断、ゴール設定を行ったうえで、障害者や
フレイル高齢者の栄養状態・サルコペニア・栄養素摂取・フレ
イルを改善し、機能・活動・参加、QOLを最大限高める「リハ
からみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」である。
Ⅶ.低栄養の原因
→飢餓、侵襲、悪液質に分類。
侵襲により、CPR5㎎/㎗以上を異化期、CPR3㎎/㎗以下を
同化期と判断する目安があり、異化期か同化期かで治療内容
が異なる。
Ⅷ.サルコペニアの摂食障害
→全身および嚥下関連筋の筋肉量減少、筋力低下による
嚥下障害である。
参考資料:整形・災害外科 Vol.61 No.9 2018 p.1029-1044