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12/21 院内勉強会「 膝蓋骨」

放射線技師の武田です。
12/21に行われた院内勉強会に参加しました。
今回は”膝蓋大腿関節障害の診断”と”
膝関節overuse症候群の診断”について
まとめたいと思います。

☆膝蓋大腿関節の骨軟骨障害

膝蓋大腿関節に炎症が起きたり軟骨がすり減ったり骨が変形することで疼痛を生じる。主にスポーツ活動によるoveruseや膝関節脱臼・不安定症に伴って生じることが多い。

〇膝蓋骨不安定症の主訴

・膝前面痛 ・腫脹 ・不安定感 
・膝崩れ  ・膝蓋骨周囲の異音  など…

膝前面痛は階段昇降や立ち上がり動作時、しゃがみ込み時に自覚することが多いが、疼痛の所在がはっきりしない場合も少なくない。

〇膝関節のアライメント

診察では仰臥位および立位にて、正面から膝関節の内外反アライメントを観察する。極端な膝関節外反アライメントはQ角の増大と関連し、膝蓋骨不安定症の解剖学的素因と考えられる。

Q角…大腿四頭筋の作用方向と膝蓋腱がなす角度であり、上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結ぶ線と膝蓋骨中心と脛骨粗面を結ぶ線から計測される。


図1 squinting patella

つま先を中間位として両足を揃えて立位をとった際に、膝蓋骨が内側に寄る場合をsquinting patellaと呼び、大腿骨が内捻し大腿骨滑車面が内側を向くことに起因する。これらを呈する膝関節ではQ角は大きくなる。

20°を超えるQ角は異常値とされており、大腿四頭筋の収縮によって生じる膝蓋骨を外側に偏位させる合力が大きくなるため膝蓋骨脱臼の危険因子とされている。

〇膝関節の圧痛点
触診にて圧痛点の局在を詳細に同定する。

・脛骨粗面⇒オスグッド病
・膝蓋骨下極⇒ジャンパー膝、Sinding-Larsen-Johansson病(※)

※Sinding-Larsen-Johansson病とは?
膝のoveruseによって膝蓋骨下極に圧痛を生じる。
レントゲンにて膝蓋骨下極の剥離を認める場合もあり、好発年齢はオスグッド病
に比べて若いと言われている。

・膝蓋骨近位外側⇒有痛性分裂膝蓋骨
・大腿骨内側上顆周囲(Bassett’s sign)
⇒膝蓋骨脱臼による内側膝蓋大腿靭帯の大腿骨付着部近傍での損傷を示す。
※内側側副靭帯(MCL)付着部と近接しており、MCL損傷と誤診されることも少なくない。

〇疼痛誘発テスト
・patellar compression test
…仰臥位で膝関節屈曲30°とし、膝蓋骨の内・外側関節面を大腿骨滑車溝に押し込むように内外測に圧迫し、疼痛誘発の有無を確認する。

〇不安定性テスト

・Apprehension test
仰臥位で膝関節屈曲30°とし、膝蓋骨内側縁に外側方向への圧迫力を加えた状態で被験者に自動伸展を行わせる。脱臼不安感や外側への不安定感を訴える場合には外側不安定性陽性とする。

・Lateral patellar glide test(図2)
…膝関節伸展位および屈曲30°で行い、膝蓋骨内側縁を外側に圧迫し、膝蓋骨膝蓋骨内側幅の1/2以上外側移動した場合を外側弛緩陽性とする。


図2 Lateral patellar glide test(左膝)

〇単純X線検査

・膝関節軸位撮影像
⇒膝蓋大腿関節の適合性、膝蓋骨の外側偏位、傾斜を直接評価できる。
※この肢位は股関節も屈曲位をとるため、膝伸展機構は弛緩し膝蓋骨の偏位が過小評価される恐れがある。

・Merchant view(図3)
⇒仰臥位、膝関節屈曲45°となるよう両下腿を検査台から下垂させ、X線は検査台から15°の角度で打ち下ろす。


図3 Merchant view
膝伸展機構に張力をかけて撮影することができる。(一種のストレス撮影)


図4 膝関節軸位撮影像
上:膝関節屈曲30°skyline view. 両膝関節とも膝蓋大腿関節の適合性は良好
下:Merchant view. 左膝関節では膝蓋骨の外側偏位・傾斜が観察される

☆膝関節overuse症候群の診断

〇ランナー膝(腸脛靭帯炎)

ランナーや自転車競技者に多く認められる膝外側部痛を呈するoveruse症候群である。大腿骨外側上顆部の圧痛(図5)を確認することにより、本症の診断は可能であるが、MRIでは腸脛靭帯の局所的な肥厚や腸脛靭帯深層の大腿骨外側上顆部に炎症や水腫を示唆する所見が認められる。


図5 大腿骨外側上顆部
腸脛靭帯と膝関節の大腿骨外側上顆部(A)との摩擦により腸脛靭帯炎が生じるとされている。

〇ジャンパー膝(膝蓋腱炎)

ジャンプや着地動作を頻繁に繰り返すスポーツに多く見られる膝伸展機構のoveruse障害であり、膝蓋骨をはじめとする膝伸展機構への反復する過度な牽引力により骨付着部周囲の膝蓋腱に微小損傷が生じるため発症する。
画像診断としてはMRIが有用であり、膝蓋骨近位の後方部を中心とした信号異常域が特徴的である。

発生要因は…
・膝蓋腱への負荷 ・下肢アライメント ・膝蓋骨高位
・膝蓋骨不安定症 ・膝周囲筋のアンバランス  など…

〇鵞足炎

膝内側の鵞足部周囲の疼痛と圧痛の存在が特徴的な症候群である。原因としては鵞足部に付着する膝屈筋群の付着部炎および同部の滑液包炎とされているが、症状の有無と画像所見が必ずしも一致しないことがあり、あまり有用ではない。

・長距離ランナー ・糖尿病 ・変形性膝関節症
・関節リウマチ  ・肥満女性

に発症頻度が高いとされている。