PTの山形です。
今回の院内勉強会では膝半月板損傷、膝関節靭帯損傷の診断について実技も交えながら学んだため報告します。
まず半月板損傷についてです。
○はじめに
半月板は、荷重分散、衝撃吸収、関節安定性、潤滑、固有感覚受容器として機能している。
半月板損傷は膝関節痛、関節腫脹、可動域制限をきたし、関節軟骨への負荷が大きくなり将来的に変形性関節症を発症する危険性がある。
若年者がスポーツや外傷で膝を強制的に捻った後に膝関節靭帯損傷と合併し生じることが多い。
○徒手検査
半月板損傷では前述したように関節腫脹、可動域制限、荷重時の疼痛を訴えることが多く、特に関節裂隙の圧痛は診断評価項目として重要である。
損傷した半月板に負荷ストレスを与えることによって疼痛を誘発し、断裂の有無を診断する方法として以下(図1~3)の検査がある。
○画像検査
画像検査では荷重位にてX線により関節裂隙の狭小化を半月損傷の評価とできる。
しかしMRI検査は半月の前節・中節・後節のすべての部位での断裂および変性を診断することが可能であることから、半月板損傷の画像診断としてはも最も有用である。
半月板損傷のgrading system
一般的には上記の3段階でのgradingでスクリーニングを行う。Grade3は実際に半月板損傷が起きている状態であり、Grade3を再分類、再評価を行い、さらに特殊な断裂形態である、縦断裂、横断裂、水平断裂、後角断裂を認識していれば、半月板損傷のMRI画像診断率は向上する。
次に膝関節靭帯損傷についてです。
今回は前・後十字靭帯について記載させていただきます。
○前十字靭帯損傷
前十字靭帯(以下ACL)損傷は本邦で年間3~4万件の発症件数が報告されており、スポーツに伴い損傷することが多い。ACL損傷は男性より女性が1.5~1.7倍高く、女性のほうが損傷しやすいとされる。
○受傷機転
非接触型:前者はターンや急停止動作、ジャンプからの着地動作時に膝がガクッとなり生じることが多い。
接触型:後者はタックルや外傷などに伴う予期しない外力により、膝関節過伸展や下肢外反に伴う過度の下腿外旋などで膝を捻り生じる。
○徒手検査
○治療方針
ACL損傷の治療方針は膝関節安定性の再獲得である。そのため早期にACL再建術を考慮することが望ましい。しかし受傷直後は関節可動域制限が残存しており、この時期に再建術を行うと関節線維症を生じる可能性がある。
急性期ではまず理学療法などの機能的治療法により基本的関節機能の回復を図り、受傷日より約2~3週間後に再建術を考慮する。
○後十字靭帯損傷
後十字靭帯(以下PCL)はACLの2倍の破断強度とされており、ACLよりも強靭である。
新鮮例では関節腫脹、可動域制限、下腿前面に挫傷を認めることが多い。
○受傷機転
PCL損傷は膝屈曲位で下腿前面を打撲するかたちで強く着地した場合や脛骨中枢部を前方から後方へ強い直達外力を受けた場合に損傷される。スポーツだけではなく交通外傷でのdash board injuryによって生じることも少なくない。
○徒手検査
○治療方針
PCL単独損傷は不安定性が残存するにも関わらずその機能予後は比較的良好であるため、関節可動域訓練、大腿四頭筋訓練、agility訓練を中心とした保存療法を第一選択することが多い。
他の靭帯損傷や半月損傷を合併する場合、また陳旧性PCL損傷に加えて他の靭帯損傷を合併した場合は再建術を選択する。