〒470-0207 
愛知県みよし市福谷町壱丁田1番地1

【受付】8:30-12:00/15:40-18:30
【休診日】木曜午後、土曜午後、日曜日

クリニックブログ BLOG

院内勉強会 腰殿部痛「仙腸関節障害」と「上殿皮神経/中殿皮神経障害」をどう見極めるか

理学療法士の後藤です。
今回の院内勉強会では「骨粗鬆症性椎体骨折の保存療法」について学んだため報告します。



はじめに


腰殿部痛を訴える患者さんには、画像で異常を認めづらい「非特異的腰痛」が多く含まれています。当院ブログでも過去に、筋膜性疼痛、関節性疼痛、神経性疼痛といった多様な原因がその背景にあると紹介してきました。

今回は、そのなかでも頻度の高い「仙腸関節障害」と「上殿皮/中殿皮神経障害」について、理学療法士やリハビリ関係者に向けて、鑑別と介入のポイントを整理します。


仙腸関節障害

どんな疾患か

  • 仙腸関節は、脊椎から下肢に荷重を伝える重要な関節で、体重や外力の衝撃を分散・吸収する役割を担っています。 
  • しかしその可動はごくわずかであるため、レントゲン・MRIなどの画像検査では異常をとらえにくく、診断には機能診断や徒手検査が必須とされます。 

診断のポイント

  • 患者さんに痛みの“ひとさし指”で訴えてもらう「One‑Finger Test」がしばしば有用。仙腸関節部の特定の圧痛点を示すことがあります。 
  • 加えて、股関節・骨盤ストレスを加えることで痛みが再現される徒手テスト(FABER Test、加圧/圧迫テスト、荷重テストなど)により機能障害を評価。複数テストで陽性であれば、仙腸関節が原因である可能性が高まります。 
  • ただし、画像上に腰椎疾患(例えば椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄など)の所見があっても、それが痛みの原因と一致しないこともしばしばあるため、臨床所見との整合性を重視します。 

 

治療・リハビリの考え方

  • 保存療法が基本。骨盤ベルトで関節の過剰な動きを制限し、安定性を確保することで症状の軽減を図る。 
  • 運動療法では、特に体幹と骨盤帯の“深層筋(インナーマッスル)”の賦活が重要。たとえば、ドローイン によって腹横筋を適度に働かせ、仙腸関節の安定性を高める。 
  • 股関節周囲や腰部・骨盤まわりの筋・関節の柔軟性の改善も併せて行う。これは、股関節や隣接関節の動きが制限されていると、仙腸関節に不自然なストレスがかかるためです。 
  • 保存的アプローチで改善しない場合には、関節内または靱帯内への注射(ブロック)が診断的かつ治療的に有用となることがあります。 



上殿皮神経/中殿皮神経の絞扼(神経障害)

背景と特徴

  • 上殿皮神経と中殿皮神経は、腰・仙骨神経叢由来で殿部皮膚を支配します。これらの神経は浅層を走行するため、筋膜や靱帯の癒着、あるいは衣服やベルトの圧迫などで絞扼されやすいとされています。 
  • 臨床的には、深部痛というより“表層の鋭い痛み”や“灼熱感”、ときに“知覚異常(しびれ、違和感)”を訴える患者さんが対象となります。運動麻痺などは通常伴いません。

診断のヒント

  • 走行上、殿部の腸骨稜付近や殿裂外側に触診で圧痛点があるか確認。圧痛や叩打痛(Tinel sign様所見)があれば、神経絞扼の可能性を考慮。
  • 診断的に神経ブロックを行い、痛みが改善すれば神経障害を確定する、という手法も報告されています。 

リハビリ・治療のポイント

  • 筋膜リリースやストレッチで、殿部〜腸骨稜まわりの癒着を解消。特に、靱帯や筋膜の過緊張・癒着は神経圧迫の温床となりやすいため、丁寧なアプローチが重要です。
  • 患者の日常生活や動作分析を通じて、「どのような姿勢・圧迫・衣服・ベルト」が発症トリガーになっているのかを把握し、再発予防の観点から生活指導を行う。
  • 必要に応じて神経滑走(モビライゼーション)メニューを導入し、神経の動的な滑走性を改善。

 

終わりに

こんなときは早めにご相談ください

  • おしりの痛みが1週間以上続く
  • 太もも〜膝まで痛みが広がる
  • 立ち上がり・歩きで痛みが強くなる
  • 座っているだけでおしりに鋭い痛みが走る

早く原因を見つけて治療を始めることで、改善がぐっと早まります。

腰殿部痛は、画像で異常がなくても、実は関節や神経といった“構造+機能”の問題が隠れていることが少なくありません。

原因が違えば、治療の内容も大きく変わります。

そんなときは、早めにご相談ください。

一緒に原因を見つけ、最適な治療をご提案いたします。

Translate »