理学療法士の渡邊です。
今回は「膝離断性骨軟骨炎の診断と治療」「膝軟骨下骨不全骨折(膝骨壊死)の診断と治療」について学んだため報告します。
〈膝離断性骨軟骨炎とは〉
膝関節の離断性骨軟骨炎は発育期スポーツ傷害の一つであり、活動量の多い若年者に多く発生します。
離断性骨軟骨炎の原因は複数挙げられていますが主因は繰り返す微小外力により関節軟骨と軟骨下骨間に裂離が生じて発症すると考えられています。
発生部位は大腿骨内顆が最も多く、次いで大腿骨外顆、膝蓋骨、滑車、脛骨プラトーと続きます。
症状としては、初期の安定した病変ではスポーツ活動時の疼痛が主な症状ですが、軽度の疼痛や違和感のみで経過し、進行してから診断される場合があります。
不安定な病変に進行すると、引っ掛かり感や可動域制限、ロッキング症状、関節水腫が生じる場合があります。
そのため、早期に適切な診断と治療を行う必要があります。
〈膝離断性骨軟骨炎の治療〉
・保存療法
不安定性の所見がなく骨端線閉鎖前の症例では、まずスポーツ活動の制限を行い、定期的に画像検査を行いながら保存的に経過をみていきます。
保存療法での癒合率は50~90%とされています。
保存療法には活動性制限や装具、ギプス固定などが行われます。
保存療法により3~6カ月後に改善傾向がない場合には手術治療を検討します。
・手術治療
保存治療で症状が軽快しない例や不安定な症例に対して手術治療を行います。
手術治療には骨穿孔術、骨軟骨片固定、自家骨軟骨柱移植術、自家培養軟骨移植などの方法があります。
遊離体がみられる場合、早期の状態であれば固定が可能な場合が多いため、可能な限り早期に手術を行うことが望ましいです。
〈膝軟骨下骨不全骨折・膝骨壊死とは〉
下肢の大関節に生じる突発性骨壊死の代表的なものには突発性大腿骨頭壊死症と突発性膝骨壊死症があります。
突発性大腿骨頭壊死症は動脈硬化や静脈還流傷害などに起因する骨頭内虚血による壊死と考えられています。
対して突発性膝骨壊死症は、軟骨下骨脆弱性骨折由来と考えられています。
軟骨下骨脆弱性骨折の誘因としては、骨粗鬆症に加えて膝関節の内反変形性、不安定性により骨折が起きます。
上記の骨折から壊死が引き起こされ突発性膝骨壊死症になります。
〈膝関節不安定性と脆弱性骨折の機序〉
膝の不安定性に関与するのが半月板のフープ(hoop=輪)になります。
これまで半月板は衝撃を吸収するクッションとして考えられていましたが、近年は「関節安定化機能」として注目されています。
内側半月板と外側半月板で形成される「輪」が、脛骨関節面上の「土俵」として(図1-a)、荷重時の大腿骨の「ブレ」を防いでいます(図1-b)。
また、関節の接触面の拡大にもフープは関与しており「圧分散機能」にも関与しています。
そのため、フープの断裂によって「関節安定化機能」と「圧分散機能」の双方が破綻すると軟骨下骨に大きな衝撃が加わり(図1-c,d)、脆弱性骨折が生じる可能性が高くなります。
さらに脆弱性骨折が正常な治癒過程に乗ることができないと突発膝骨壊死に至ります。
図1.半月板フープを土俵に例えた模式図
a:内側半月板と外側半月板を連続した「輪」と考えると、脛骨関節面にある土俵に例えられる
b:その上に大腿骨を乗せたところ
c:内側半月板後根断裂の模式図
d:脛骨内方傾斜に沿って大腿骨と土俵がともに内側に滑りやすくなる
〈変形性膝関節症と軟骨下骨不全骨折/突発性膝骨壊死の分類〉
このような急速に進行する症例の場合には、慢性に経過する変形性膝関節症とは異なり、骨折部の周囲あるいは圧壊の進行してきている顆部に広範な骨髄浮腫を伴っている場合が多いです。
そのため患側を触診すると、健側よりも熱感を感じることができます。
また、骨髄内圧上昇からくる夜間痛を訴える症例もあり、変形性膝関節症の荷重時痛や半月板損傷による屈曲時痛だけではなく、安静時の熱感と夜間痛を合併する場合には膝軟骨下骨不全骨折/突発性膝骨壊死の疑いがあります。
さいごに
今回は膝離断性骨軟骨炎と膝軟骨下骨不全骨折/膝骨壊死について学びました。
膝離断性骨軟骨炎は若年スポーツ選手に多いことから疼痛などの症状の改善だけでなく、スポーツ復帰など膝関節機能の早期回復と長期的な変形性膝関節症の予防が必要になります。
膝軟骨下骨不全骨折は半月板フープが破綻して、軟骨下骨に繰り返し負荷が加わり、耐えられなくなると膝軟骨下骨不全骨折が生じ、正常な治癒過程をたどれなかった場合に膝骨壊死に進行していきます。
どちらの疾患も早期診断と早期治療が大切になりますので、進行してしまう前に早めの受診をお願いいたします。
当院では、このような勉強会を定期的に開催しています。次回の投稿もお楽しみに!