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クリニックブログ BLOG

院内勉強会「小児整形外科診療に対する超音波検査の有効性」

●はじめに

こんにちは。
理学療法士の渡邊です。
12/2に行われた院内勉強会に参加しました。
今回は”小児整形に対しての超音波検査”についてまとめたいと思います。

超音波検査の特徴

超音波検査とは、人が聞き取ることのできない周波数の高い音を当て、その反響を映像化する画像検査法です。
検査時には超音波が伝わりやすいように、体の表面に検査用のゼリーをぬり、超音波の出る機械を当てて検査を行います。
超音波検査の利点としては、筋、腱、靭帯、関節包などの軟部組織の抽出に優れていることです。
欠点に関しては、骨構造を映像化する際に超音波が全反射してしまい深層の画像化が困難になることです。
そのため、超音波検査では表層での検査にとどまってしまいます。


●その他の画像検査

その他の画像検査の方法としては、単純X線像(レントゲン)・CT・MRIなどがあります。
これらの画像検査方法では、超音波検査に比べ広範囲に診察することが可能です。
しかし、単純X線では軟部組織・軟骨構造・関節液が抽出されず、CTでは軟部組織・軟骨構造が抽出されにくく関節液が抽出されない、欠点があります。
また、単純X線とCTでは被爆する恐れがあります。
MRIは骨構造・軟部組織・軟骨構造・関節液が抽出されるものの、時間がかかる点やその際に鎮静や睡眠が必要になります。
そのことからMRIは小児の整形外科診察において不向きになります。


●超音波検査が小児整形の診察に効果的な理由

小児整形外科領域における超音派検査は、前述した通り筋、腱、靭帯、関節包などの軟部組織の抽出が可能ですが、一番の利点としては軟骨構造の抽出が可能なことです
小児の骨格系は、成人と比べ軟骨構造に富んでいます
特に新生児期の股関節(大腿骨)は、骨頭と大転子は軟骨構造であるため、単純X線像では抽出が出来ません。
その他には、10歳までの肘関節橈側の検査において有効です。
上腕骨小頭は小児期において骨化核が小さく、橈骨頭はすべて軟骨構造になります。
股関節や肘関節だけではなく、様々な部位において小児整形外科疾患に応用が可能です。


●スポーツ整形外科

超音波検査はスポーツ整形外科の分野で広く用いられています。
超音波検査は被爆がなく、繰り返し実施することができ、他の検査では難しい関心領域の動きや血流をとらえることができます。
また、ポータブルタイプであれば連帯性に優れ、スポーツ現場に持ち込んで検査を行うことが可能です。
こうした特徴やメリットからスポーツの現場に用いられる要因となっています。


●超音波検査による肘離断性骨軟骨炎の早期発見を目的とした少年野球検診

野球肘の1つである肘離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans:OCD)は上腕骨小頭に発生することが多いです。
初期のOCDは自覚症状に乏しいのが特徴で、選手が病院を受診した時点では既に進行して、手術を選択せざるを得ないことが多いです。
福島県では、小学生野球選手を対象に、OCDをはじめとする骨軟骨傷害の早期発見を目的とした現場検診を行っています。
2011年の結果では、検診受信者1040名のうち、OCDと診断された選手は22名でした。
OCDと診断された中の65.2%には疼痛がみられませんでした。
このことからも、スポーツ現場に超音波検査を導入することで、無症候性のOCDを検出できると考えられます。


図1.肘関節に対する超音波検査(左から前面、後方、外側から描写しています)


終わりに

画像検査において現在は様々な方法があります。
それぞれのメリット、デメリットがあり、その方にあった検査方法が必要になってきます。
超音波検査では簡易的に行えること、軟部組織の描写ができることから小児の画像検査としては有効です。
また、近年では超音波検査での画像が精細になってきており、より鮮明に抽出することが可能になっています。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。
今後も患者様のために研鑽していきます。
今後の投稿も楽しみにしていてください