理学療法士の宮崎です!先日、院内勉強会に参加しました。
テーマは、「腰椎椎間板性障害と腰痛」です。
*はじめに*
腰痛で受診した際、「大きな異常はありません」「しばらく様子を見ましょう」と言われた経験はありませんか?
実際、腰痛の多くは骨折や腫瘍、感染といった危険な疾患が否定され、下肢のしびれや麻痺などの神経症状も伴わない「非特異的腰痛」に分類されます。
非特異的腰痛という言葉から、「原因がわからない腰痛」と感じてしまう方も少なくありません。しかし、非特異的腰痛とは何も起きていない腰痛という意味ではなく、原因を一つに決めきれない腰痛を指す言葉です。
その中の一つとして知られているのが「腰椎椎間板性腰痛」です。
そもそも「椎間板性腰痛」とはなにか?
→腰の骨と骨の間にある「椎間板」に生じた変化が、腰痛の発生に関与していると考えられる状態を指します。
椎間板は本来、背骨にかかる衝撃を和らげ、体を動かす際のクッションとして重要な役割を担っています。加齢や長時間の同じ姿勢、繰り返される前かがみ動作などによって、椎間板の外側にある線維輪に小さな傷が生じることがあります。

図1 椎体と椎間板
A 椎間板は、上下の椎体間に位置し、脊柱に加わる荷重を吸収・分散する。水色で示す構造は椎間板を示す。
B 椎間板は、外側の線維輪と内側の髄核からできている。図Bに示すように、まわりを取り囲むよう層状の部分が線維輪、中央のやわらかい部分が髄核である。
このような変化はレントゲンや通常のMRIでははっきりわからないことが多く、そのため「原因がわからない腰痛」として扱われてしまうことがあります。ところが近年ではこうした線維輪の損傷部に炎症が起こったり、本来は入り込まないはずの痛みを感じる神経が椎間板内に侵入することで椎間板が痛みに関与する状態に変化することがわかってきました。
このような場合、椎間板は単なる「クッション」ではなく、腰痛の背景の一つとして関わっている可能性がある組織として考えられています。
こうした椎間板の変化を捉える手がかりとして、MRIで確認されるHIZ(High signal intensity zone)や、椎間板造影CTでみられるTAT(toxic annular tear)といった画像診断が注目されています。
*HIZとTATとは?*
「HIZ」・・・MRIで椎間板の後ろの方が白く見えている状態
→線維輪が傷つくことで炎症や浮腫、血管等が侵入してしまい水分が多くなっている状態で、その水分に反応しMRIにて白く映る
「TAT」・・・椎間板造影での所見
→椎間板の外側にできた裂け目が、造影剤検査で確認された状態
*椎間板性腰痛と運動療法の考え方*
腰痛椎間板性腰痛に対しては、手術や注射よりも前にまずは運動療法が基本になると考えられています。ただし、ここでいう運動療法は腰をたくさん動かしたり、腹筋や背筋を強く鍛えたりすることではありません。
体の関節には、それぞれの役割の違いがあります。大きく分けると、
◎「安定していることが求められる⋯Stability関節」
◎「よく動くことが求められる関節⋯Mobility関節」の二種類です。
この考え方を整理したものが、Joint by Joint Theoryです。

図2 Joint by Joint Theory
この理論では、
・腰椎は「安定する関節」
・胸椎と股関節は「よく動く関節」と考えます。
本来動くべきなのは胸椎と股関節であり、腰椎は過剰に動かないことが重要です。
しかし実際には⋯
・胸椎は、肋骨に囲まれていて動きにくい
・股関節は、太ももやお尻の筋肉が固くなると動きが制限される
といった理由で、本来動くべき関節が動かなくなることがよくあります。
その結果、「代わりに腰椎が動きすぎてしまう」「安定すべき腰に負担が集中する」という状態が起こります。本来は安定しているはずの腰椎が「動く役割」まで担われてしまうことで腰痛が起きる大きな原因となるのです。
そのため椎間板性腰椎では、まず胸椎の動きや股関節の動きを取り戻し、そのうえで腰部の安定性を高めるという順番がとても大切になります。
運動では、腰を安定させたまま、胸椎だけを丁寧に動かす練習や、姿勢を保ちながら呼吸とともに体を動かす練習を行います。
こうした運動をとおして、腰に負担をかけにくい身体の使い方を身につけていくことが、椎間板性腰椎の改善につながります。
*おわりに*
今回は、腰椎椎間板性腰痛についてHIZやTATといった画像所見をもとにまとめました。
椎間板に変化があるからといってすぐに手術が必要になるわけでも、何もできないわけではありません。椎間板性腰痛は非特異的腰痛の一つとしてまずは運動療法が基本となる腰痛です。
正しく評価し、適切な順番で身体を整えていくことで改善を目指せる腰痛も多くあります。
腰痛に悩んでいる方が、ご自身の身体を理解するひとつのきっかけになれば幸いです。
次回の投稿もお楽しみに!