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院内勉強会 スポーツ選手の「外傷性肩関節不安定症」「SLAP損傷の外科的治療」

みなさんこんにちは!理学療法士の宮崎です。
先日、院内勉強会に参加しました。
テーマは、スポーツ選手における外傷性肩関節不安定症の治療とスポーツ復帰」「SLAP損傷の外科的治療です。


*外傷性肩関節不安定症とは*

 外傷性肩関節不安定症とは、外傷を契機に発症した肩関節の不安定性です。基本的に単方向であることが多く、脱臼・亜脱臼を繰り返し反復性となった場合に手術治療に至ることが多いそうです。

 他方、非外傷性不安定症という疾患概念も存在しますが、これは明らかな外傷機転がなく発症し、多方向に不安定性を呈することが多いが、筋力強化などのリハビリテーションに反応しやすいので、手術を要することは少ないです。したがって鑑別診断に当たっては外傷の有無を確認することが重要である。


*評価方法*

 外傷の有無、関節弛緩性、不安定性の方向などを評価します。高齢者では腱板断裂を伴うことも多いため、筋力のチェックも必要です。また、脱臼時に神経麻痺を生じることもあり主に腋窩神経領域を中心とした評価も重要です。

 男性のコンタクトスポーツ選手などでは、関節窩に骨欠損や骨折が頻繁に発生しており、亜脱臼だけでも関節窩前縁が大きく削れていることが少なくないです。タックルの際に痛みのみを訴えるラグビー・アメフト選手では、ほとんど転位のない関節窩骨折を生じている症例が非常に多いので、必ずCTやMRIで評価することが重要です。


*保存療法*

 一般的に、初回脱臼・亜脱臼時には保存療法が選択されることが多いですが、20歳未満の若年アスリートにおいては無効なことが多いです。特に、従来から行われてきた三角巾などを用いた内旋位固定の有効性は疑問視されています。一方、外旋位固定は反復性への移行率を低減させることが期待されるオプションですが、内旋位固定に比べ再発率がおよそ半分くらいに減少し、有効であるとの報告がみられる一方で、再発率に差がなかったとの報告もみられます。
 また、筋力強化などのリハビリテーションが行われることが多いですが、たとえ強い筋力があったとしてもコンタクトスポーツなどで外転外旋や水平伸展が強制された場合、脱臼・亜脱臼は避けられないためあまり意味がないとも考えられています。
 一方、オーバーヘッドスポーツ選手の投球測については、投球フォームなどの身体の使い方を指導することにより、ある程度コントロールできるため投手などではまず保存療法を試みてもいいと考えられます。


*手術療法*

 鏡視下Bankart 修復術とともに、直視下、関節鏡補助下、あるいは関節鏡下で行われる烏口突起移行術であるLatarjetあるいはBristow法が、現在の主流となっています。上記の術式で対処すれば、良好な手術成績が期待できますが、非解剖学的な術式であり、合併症の発生率も高いです。解剖学的で低侵襲な鏡視下Bankart で修復術で対処する際は、初回受傷後早期に手術治療を考慮する必要があります。CTやMRIなどの画像診断で、反復性へと移行する確率が高いと予想される症例であれば、初回受傷時であっても手術治療を行うのも選択肢の一つとされています。

*SLAP損傷とは*
 上腕二頭筋長頭腱に繰り返し負荷がかかり(上腕二頭筋の収縮による牽引力等)、上方関節唇という関節窩の辺縁に付着する軟骨が断裂する症状です。特にオーバーヘッド競技者に多くみられ、最も頻度が高いのは野球選手といわれており、投球動作のlate cocking期に生じやすいです。

SLAP病変は形態的に、4型に分類されています。(図1)

TypeⅠ:関節唇の剥離はなく変性のみ
TypeⅡ:上方関節唇が関節窩から剥離したもの
TypeⅢ:関節唇実質にバケツ柄断裂を生じ関節唇実質が転位関節内に陥頓しうる状態となったもの
TypeⅣ:関節唇のバケツ柄が上腕二頭筋腱に及んでいるもの




*治療方法*
 SLAP損傷の症例の多くは、リハビリテーションでの運動療法で症状が改善し競技復帰可能となります。そのためSLAP修復術の手術適応決定には、詳細な理学所見とMRI、エコーなどの画像診断による局所の解剖学的損傷の把握に加え、肩甲帯・体幹・下肢を含めた全身の機能評価が重要になります。腱板機能および肩甲帯機能訓練と下肢から上肢への正常な運動連鎖の再獲得のため、足部、股関節、体幹、肩甲帯の運動機能改善と協調運動獲得を主眼においた運動療法を行います。このような保存的治療を3か月以上行っても症状が持続し運動パフォーマンスが改善しない場合に鏡視下手術を検討します。


*さいごに*
 当院にもさまざまなスポーツによる肩関節の痛み・不安定感を訴える方、若年者(20歳未満)の患者様が来院されます。場合によっては反復性に移行し、スポーツ復帰に時間を要する場合もあります。そうならないように怪我の予防、再発防止に努め、一人一人に合わせたリハビリテーションを提供できるよう、日々研鑽していきます。

それでは次回の勉強会の投稿もご覧ください!(^^)!

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