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クリニックブログ BLOG

院内勉強会「月状三角骨障害の理学所見と画像診断」

理学療法士の山形です。
今回の院内勉強会では「月状三角骨障害の理学所見と画像診断」について学んだため報告します。

●はじめに

月状三角骨障害とは月状三角骨間靭帯(lunotriquetral interrosseous ligament:以下LT)損傷により生じる障害で、部分損傷から完全断裂まで様々な重症度を呈する。単独損傷としての頻度は少ない。


臨床症状は手関節尺側部痛で、手関節尺屈時や回外時に誘発され轢音や異音を伴う。また手関節背側の月状骨と三角骨間に圧痛を認める。
その他に頻発する症状としては筋力低下や抜け感(giving way)がある。まれに尺骨神経領域の知覚障害を呈する。


●他の手関節疾患との鑑別

LT損傷は正確な診断が困難といわれている。

その理由として

①代表的な臨床症状である手関節尺側部痛は、他の手関節疾患でも多くみられる。(例:三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷、尺骨突き上げ症候群、有鉤骨骨折、豆状三角骨関節症など)
②手関節鏡を除くMRIなどの画像診断では感度と観察者間一致率が低く信頼性が高くないため、画像診断単独でのLT損傷の診断を行うことができない
③関節鏡などの検査を重ねることで診断能は高まるが、無症候性の変性断裂をも拾い上げてしまう。

これらの点が診断を難しくしている。

画像診断のみに頼ることなく理学所見を正確にとることで包括的に診断することが重要である。


●理学所見

理学所見では、ストレスを患部に加えることで痛みなどを誘発し、それが日々感じている症状と一致するのかどうかを確認しながらとる。また様々な画像診断と組み合わせることで、両者を相補的に利用することが的確な診断につながり、結果的に適正な治療を提供できることとなる。

LT ballottement test
月状骨を母指と示指で把持し、もう片方の手で三角骨と豆状骨をまとめて把持して背側や掌側方向へ力を加える。そのときに疼痛や轢音、過剰な関節動揺性を認めた場合、陽性となる。



LT compression test
三角骨を尺側から橈側方向へ、月状骨に対して圧迫するように力を加える。その圧力により患者が症状を訴えれば、月状三角骨間障害か三角骨有鉤骨間障害を想起し、またTFCC関連障害の可能性は低いと判断する。



●画像診断(単純X線)

手関節を構成する手根骨や前腕の骨は可動性を有しているため、撮影肢位によって位置関係が変わる。また骨自体が小さいため計測はミリ単位で行われる。

〇LT障害における手関節単純X線像
LT解離が生じた場合、月状骨は舟状骨とともに掌屈し、三角骨は背屈する、いわゆる近位手根列掌側回転型手根不安定症(volar intercalated segment instability:VISI変形)が生じるとされるが、HoriiらはVISI変形はLTのみの断裂では生じず、背側橈骨手根靭帯と背側手根間靭帯の断裂があって初めて生じると報告している。
すなわち多くの症例で単純X線像は正常であり損傷は覆い隠されてしまうということである。

staticなVISI変形の場合、正面像ではGilula’s lines(下図左)の破綻や三角骨の近位への転位、月状骨が短縮した舟状骨に向けて月のような形を呈し、三角骨とoverlapすることがあるが、舟状月状骨靭帯損傷と比較してLT間のgapを認めないことが多い。(下図右)



また側面像でのアライメント異常として月状骨が掌屈することによる橈骨月状骨角の増大や舟状月状骨角の減少、有頭月状骨角の増大などの所見を参考にする。(下図)




●さいごに

今回は月状三角骨障害の理学所見と画像診断(単純X線)について学びました。
理学所見にて手根骨という小さな骨を操作する難しさを改めて実感しました。
手関節に対するリハビリがスムーズに行えるように今後も触診や検査・測定の技術を研鑽していきたいと思います。

次回の投稿もお楽しみに!