こんにちは、理学療法士の渡邊です。12月19日に行われた院内勉強会に参加しました。今回のテーマは「こどもの歩容異常の鑑別診断」「こどもの下肢(骨盤∼股関節)の痛みの鑑別診断」についてです。
<はじめに>
こどもの歩き方は様々であり、歩き始める時期や手の振り方、足の運び方など全く同じ歩き方をする人はいません。
年齢によっても歩き方は変化していくため、正常なこどもの歩行パターンを理解し、こどもの歩き方が正常なのか異常なのか判断していきます。
<年齢による歩容の変化>
95%のこどもは1歳6か月までに独歩が可能となります。そのため、1歳半検診の際に歩行について確認され、歩けない場合は小児科あるいは整形外科の受診を勧められます。
歩き始めたばかりの頃は、足を大きく開き、股関節の伸展はほとんどなく膝を高く上げて歩きます。(よちよち歩き)年齢とともに足の開きは小さくなり、股関節も伸展するようになってきます。ダウン症をはじめとする体の柔軟な子供たちは、関節を安定させるのに通常より筋力が必要となる為、よちよち歩きが長く続きます。
歩きはじめのこどもは上肢を高く挙げ、つま先からペタペタ着地します。歩行が安定してくると踵から接地するようになり、もう少し慣れてくると股関節の伸展が出始めてtoe off時に膝の屈曲が出現するようになります。3歳ごろまでにこのような歩容になり、成人とほとんど同じになります。
しかし、5歳以降に転倒する回数が増える子供は下垂足が多く、神経筋疾患を疑います。
<子供の歩行パターン>
歩き始めるのがはやい子供はつま先が内側に向く、「うちわ歩行」となることが多いです。逆に体の柔らかい子供で偏平足が強いとつま先が外を向く「そとわ歩行」になりやすいです。うちわ歩行とそとわ歩行は進行方向に対する足部のなす角(foot progression angle:FPA)で評価されます。つま先が外を向くのがプラス、内を向くのがマイナスとすると成人のほとんどがFPA+5~10度程度になります。つま先の向きを規定するには、足の形、下腿の捻じれ、大腿骨の前捻を評価していく必要があります。
※歩行のfoot print
<下肢アライメントの評価方法>
足部の評価方法は足底からみた踵部に対し、長軸方向に二等分線を引くと通常は第2,3趾の間を通過します。(heel bisector line:HBL)HBLが第2,3趾の間より外側を通過する場合は、前足部は内転、内側を通過する場合は外転しているとなります。
下腿の評価方法としては、被検者に腹臥位になってもらい、膝関節屈曲90度、足関節中間位で足底面が天井を向くように体位をとります。そこで大腿部と足部のなす角をthigh foot angle(TFA)といいます。通常は足部が大腿骨に対して外を向く、下腿が概念している状態になります。(約10度)5歳までのこどもでは内捻していることがありますが、多くは自然に改善するため経過観察します。
最後に大腿骨の前捻はTFAを測定した肢位から股関節を内旋させて、その角度を測ります。内旋角度が大きいほど前捻が強く、60度以上では異常と判断します。大腿骨の前捻が強いと臼蓋に対して大腿骨を内旋した位置で関節適合性が良くなるため、うちわ歩行になりやすいです。
※左の図から足部の評価(Heel bisector line)、下腿の評価(Thigh foot angle)、大腿骨前捻の評価
※大腿骨の前捻が強いと股関節を内旋させた位置で関節の適合性が良くなる
<疼痛がある場合の鑑別>
歩容異常のあるこどもを診察する時は、まず疼痛の有無を判断します。跛行があれば、荷重時間、関節の可動域から疼痛部位の判断し触診によって疼痛部位を確認します。疼痛部位が判明したら、炎症の有無を判定します。視診で腫脹や発赤を触診で熱感や圧痛を確認します。炎症を疑う所見があれば血液検査を行います。小児の感染は成人以上に早期発見、早期治療が必須になります。それはこどもの関節は軟骨成分が多いために障害を起こしやすいからです。
<こどもの骨盤~股関節の痛みの鑑別診断>
前述した通り、小児の股関節疾患は発熱の有無などから感染性の疾患を疑います。その他、小児の股関節疾患は診察所見や年齢などからおおよその診断が可能になります。
発熱を伴った股関節周囲の疼痛は乳幼児に多い化膿性股関節炎や股関節周囲の骨髄炎や筋炎にくわえて、年長児では仙腸関節炎を念頭に置きます。発熱がなく跛行を訴える患者では、安静で症状が軽快する単純性股関節炎の頻度が最も高いですが、症状が長期間持続して改善が乏しい症例では、就学前後の男児に好発するペルテス病や、10代前半の大柄な男児に好発する大腿骨頭すべり症を念頭において診察をします。運動を契機に発症した股関節痛は、骨盤周囲の剥離骨折が考えられえます。いずれの症例でも、白血病や神経芽腫の骨転移などの悪性腫瘍を鑑別疾患に挙げます。
大腿骨頭すべり症やペルテス病などの股関節疾患は大腿部や膝周囲を痛がることがあるので注意が必要です。
ペルテス病は小児期の大腿骨近位部の骨壊死で、壊死骨の吸収後に新生骨へ置き換わって自己修復することが、成人の大腿骨頭壊死症との大きな違いになります。原因はまだ解明されておらず、6歳前後の男児に多く発症します。治療としては壊死した骨頭の圧壊を防ぎながら修復を待つことが唯一の方法になります。初期、硬化期、分節期、修復期、遺残期を経て3~4年かけて修復していきます。
さいごに
今回は「こどもの歩容異常の鑑別診断」「こどもの下肢(骨盤∼股関節)の痛みの鑑別診断」について学びました。私たちも理学療法士の立場として、歩行の動作観察を行っています。その中で、今回はこどもの年齢ごとに歩容が変わっていくことを学び、年齢にあった歩容をしているか観察することが大切だと感じました。また、評価方法としても学ぶことができ、臨床の場でも活用できることが多くあったため今後のリハビリに活かしていきたいと思います。
当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も投稿を楽しみにしていてください。