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院内勉強会「こどもの下肢変形(O脚、内旋変形、偽関節、形成不全)の鑑別診断」

こんにちは、理学療法士の小幡です。10月26日に行われた院内勉強会に参加しました。今回のテーマは「こどもの下肢変形(O脚、内旋変形、偽関節、形成不全)についてです。

<はじめに>

子どもの下肢変形は様々な原因があります。その鑑別方法は次のように挙げられます。

下肢変形(O脚)の鑑別診断
O脚は足の内側同士をつけて、膝を伸ばしたときに膝と膝の間が2歳ごろまでなら2横状態までなら正常範囲であるが、それを超えるもの、また、非対称性のものは病的であると定義されています。
O脚症例の中には、頻度は低いがくる病や低ホスファターゼ症、骨系統疾患などが含まれているため、鑑別には注意を払う必要があります。

鑑別の基本は、単純X線撮影であり、立位で両下肢全身正面像の撮影が望ましいです。くる病所見では、通常骨幹端に見えるキリっとした1本の線が曖昧になり、幅広く透過性が増し、骨幹端の境界が毛羽立ち(fraying)、中央の石灰化が遅延するため凹んで見え、(cupping)、重症になると成長軟骨板が開大する。これらの変化と同時に骨幹端が横に広くなる様子も見られる(Flaring)

単純X線画像所見での鑑別ポイントはありますが、「生理的」O脚とくる病とでは、はっきり見分けはつかないです。生理的O脚であってもビタミンD不足が背景にあり、ビタミンDの不足の程度が低かったり期間が短かったりすれば、ビタミンDは自然と充足され、単純X線で明らかなくる病所見を呈さないO脚は軽快するのではないかと考えられています。


くる病は単純X線画像のくる病所見と年齢に応じた高ALP血症に、低リンもしくは低カルシウム血症と臨床症状で診断がつくものとなります。
単純X線画像にくる病所見を認めた場合、石灰化障害の原因を突き止めるためや、くる病の種類を明らかにするものために採血も行います。小児期、どのくる病でも骨代謝回転を反映する血清アルカリフォスファターゼ(ALP)は異常高値(JSCC法1.000.IFCC法350IU/l以上)となります。これが基準値より低ければ低ホスファターゼ症です。ALPの基準値は年齢で異なりますが、1~3歳では、JSCC法で400。IFCC法で140/lを切ると「低値」といえます。
またリンの値を見て、血清リンが(年齢に応じて基準値が異なるが目安として)4.0 mg/dl未満かそれ以上で低リン血症性くる病とそれ以外に大別できます。その他は表を見て頂けると良いかと思います。

単純X線画像も採血も典型的なくる病のケースでは、どのくる病でも肋骨念珠(肋骨の軟骨移行部の成長軟骨で、横径が拡大するため、その部分だけ肋骨が隆起して触れる現象)や関節腫脹(手足の関節の成長軟骨の横径が拡大して、骨幹端だけが隆起してしまうため触れる骨性隆起)を触れることができます。

下肢回旋変形の鑑別
1.うちわ歩行(in-toeing gait),内旋歩行
歩容を観察し、膝が内に入る場合は大腿骨過前捻による大腿内捻、膝が内に入らず足先が内に入る場合は下腿内捻、内転足の可能性があります。多くは、下腿内捻や大腿骨過前捻であり、下腿内捻は両側例も片側例もみられ、大腿骨過前捻はほとんど両側性で、内転足は両側例が多いです。
内反足との違いは、後足部の内反や尖足変形を認めず、前足部の内転しています。これらは単独で認める場合もありますが、それぞれが少しずつ関与して内旋歩行を呈している場合もあります。遺伝的要因や子宮内での肢位などが要因と言われています。
痙性麻痺の場合、股関節屈曲・内転・内旋筋などの過緊張により膝が内に入ったり、後脛骨筋や腓腹筋の過緊張により膝が内反尖足位を呈したりするので、深部腱反射などの神経学的所見で鑑別します。
立位で自然と内方を向く、膝を正面にした場合に足先が内方を向く、左右差がある内転足などの足部の変形を認める、下肢内反や外反を合併するなどの確認を行います。
下腿が外捻するとともに、外果が軽度後ろに回り、内果が後ろの場合や内果・外果が前後ほぼ同一線上である場合、下腿が内捻していると言えます。
下腿の内捻の多くは、下腿三頭筋等の筋力の発達とともに自然改善がみられますが、改善が悪い場合回旋骨切り術が必要なこともあります。内転足も多くは自然に改善されますが、ごく一部に手術を要するものがあります。
たくさん歩いたり、走ったりしているようでも、股関節伸展、外旋、外転の筋力低下を認めることが多いです。成長期に生理的な減捻が少しでも進むように、可能な範囲でとんび座りを減らしつつ、股関節伸展、外旋、外転の筋力訓練や大股歩きを行なっていくことは重要となります。
2.そとわ歩行(out-toeing gait),外旋歩行
膝が外を向く場合は大腿骨外捻しており、足が外を向く場合は下腿外捻、外反扁平足であることが原因として多いです。幼児期の多くは両側例で、外反扁平足によるものです。思春期頃では大腿骨頭すべり症による股関節外旋にも留意する必要があり、Drehmann徴候やX線画像などを確認していきます。
3.Rotational malalignment syndrome
膝が内に入り、足先が外を向く場合「大腿骨前捻」と「両下腿外捻」を呈する症候群です。膝蓋大腿関節での痛みなどの症状が出る可能性もあります。また手術による矯正は両大腿と両下腿の4か所の手術が必要なため、すすめられない。最も深刻なケースを除いて、保存的な管理をするようにしていきます。


下肢弯曲変形(偽関節を含む)の鑑別
下肢の弯曲変形は、変形の改善がみられる経過良好なものから骨折・偽関節を呈して治療に難渋する疾患まで様々あります。下腿の弯曲変形では、神経線維腫症に合併する先天性下腿弯曲症は下腿偽関節症を呈する可能性が高く、早期からの介入を要します。下腿以外の大腿などの弯曲変形や骨折・偽関節を認める場合は、先天性下腿偽関節症ではない可能性があり、骨形成不全症などの骨系統疾患や、虐待による多発骨折なども考慮に入れる必要があります。神経線維腫症でみられるカフェオレ斑などの皮膚疾患症状を認める場合もあるので確認しておきます。これらの疾患鑑別において家族歴も重要となります

さいごに
今回は「こどもの下肢変形(O脚、内旋変形、偽関節、形成不全)について理解を深めました。
小児のリハビリを行う機会は少ないですが、自分の子どもの成長を見ていくときに注意していけるといいなと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も投稿を楽しみにしていてください。