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院内勉強会「こどもの内反足・外反足」

はじめに

 

こんにちは、放射線技師の武田です。

7/20に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は“こどもの内反足・外反足”についてまとめたいと思います。

 

参考文献

MB Orthop. 35(12):57-68,2022 こどもの内反足・外反足の鑑別診断

 

 

※まとめる前にとっても簡単な解説

 

内反足:足が内側に曲がっている状態

外反足:足が外側に曲がっている状態

尖足:足関節の背屈制限により、足がつま先立ちで、かかとが浮いた状態

下垂足:神経障害・麻痺・筋力低下などで足関節を背屈できず、だらりとつま先側が下がってしまう状態

凹足:土踏まずが大きくなる状態

踵足:足関節の底屈制限により、つま先が浮いて、かかと歩行の状態

 

 

 

【内反足】

 

①先天性内反足

 

・出生直後より足部の変形がみられる。変形は主に3つの要素からなっており足部は内転し、凹足および尖足を呈する。

 


図1 先天性内反足
変形は強固であり、中間位まで矯正困難である。

 

・発生の要因は統一した見解はないが遺伝、喫煙、肥満、羊水穿刺.妊娠糖尿病,セロトニンの再取り込み障害などが報告されている。

 

・一般に発生率は出生1,000に対し1~2人といわれている。男児に多く発生し、左右の発生率、および両側・片側の割合は同等である。

 

・治療としては、生後1カ月前後からギプスによる足の矯正を行う保存療法が第一選択である。

 


図2 先天性内反足、石膏ギプスによる複数回の矯正

a:矯正後、足底からみて足アーチが正常になるまで前足部を回外させる。

b:2回目矯正後、前足部を徐々に外転していく。

c:3回目矯正後、前足部を徐々に外転していく。

d:4回目矯正後、前足部を徐々に外転していく。

e:アキレス腱の皮下切腱後、最後に足部を背屈させる。


②先天性内転足

 

・内転足とは中足骨がリスフラン関節で内側へ向く変形である。この変形を呈する疾患として…

先天性内転足:すべての中足骨がリスフラン関節において内転し、後足部は中間位または軽度外反位を呈する。

先天性内転内反中足:前足部が内転かつ内反し、後足部は中間位または軽度外反位を呈する。

第1中足骨内反症:第1中足骨のみが内転し、第1・2中足骨間が空いている。

skew foot(スキュー・フット):前足部がリスフラン関節で内転し、中足部は外転、後足部は外反する、ジグザグな足を呈する。

 


図3 skew foot(スキュー・フット)

前足部は内転し、後足部は外反している。

 

・発生要因は胎内肢位によるという意見が多いが、その他にうつ伏せ寝や遺伝などが報告されている。

 

・発生率は1/1,000で女児に多く、その多くは両側に発生する。

 

先天性内転足は後足部に対し前足部が内転しているが後足部には異常がなく、また背屈制限がないことで内反足と鑑別される。

 

・治療としては、中間位まで矯正可能なものは経過観察のみで良く、多くの症例では4歳頃までに自然矯正される。

⇒より変形が強い症例では徒手矯正が必要で前足部をリスフラン関節で外転させ、ギプスや装具などで固定を行う。

 

 

③回外位足

 

・先天性内反足同様に生後直後よりみられる変形で、足部は内転し拘縮、凹足および尖足を呈する。

 

・胎内肢位が原因で、中間位まで徒手矯正が可能であることで先天性内反足とは鑑別できる。

 


図4 回外位足

左:先天性内反足同様に足部は内転し、凹足および尖足を呈している。

右:中間位まで徒手矯正が可能である。

 

・単純X線足部正面、および側面像では足根骨の配列異常は認めない。

 

・治療としては、足部外転および足関節背屈のストレッチ指導を行うが、経過観察のみで変形は矯正され、予後は良好である。

 

 

④先天性絞扼輪症候群に伴う内反足

 

・先天性絞扼輪症候群とは、羊膜の破裂に伴いその一部が絡まることで四肢の絞扼とそれによる切断や合指趾、未梢のリンパ浮腫をきたす疾患である。

⇒発生率は1/2,000~15,000で遺伝性はなく、男女差もない。

⇒内反足の合併は12~56%にみられる。

 

・手指や足趾および下腿に絞扼輪とリンパ浮腫がみられる。

 


図5 先天性絞扼輪症候群に伴う内反足

内反足変形に付随して足趾の切断や合趾の合併もみられることがある。

 

・先天性絞扼輪症候群に伴う内反足の病態は先天性内反足の病態と同様であると考える。

 

 

 

【外反足】

 

①先天性外反踵足

 

・出生直後より足関節の過度な背屈位と足の外反位がみられる疾患である。



図6 先天性外反踵足

左:足関節は過背屈し足全体は外反している。

右:徒手的に矯正が可能である。

⇒先天性垂直距骨(後述)とは徒手矯正が可能なことで鑑別される。

 

・病因は胎内肢位による足関節の過度な背屈と足の外反が矯正されたことによる拘縮であり、骨の欠損などはない。

 

・発生頻度は1/1,000で女児に多く、第1子に多いとの報告があり、股関節脱臼を伴うこともある。

 

・治療としては、足関節を底屈し足部を内反するようにストレッチを行う。

⇒ギプスや短下肢装具を併用することもあるが、予後は良好な疾患である。

 

 

②可撓性扁平足(flexible flat foot)

 

・小児の扁平足は、経過観察のみで良いものから何かしらの治療を要するものまであるが、多くの場合は可撓性扁平足(flexible flat foot)と呼ばれる生理的な扁平足で、成長とともに改善される。

 

〈扁平足とは?〉

 


図7 足部アーチ

アーチ状の構造は荷重の衝撃を効率よく吸収し、下腿三頭筋およびアキレス腱から踵骨に加わる応力を効率良く足先に伝達するのに関与している。

 

A-C:内側縦アーチ

歩行時に下腿から距骨に伝達された応力は舟状骨から内側・中央楔状骨、第1・2・3中足骨へと伝達され、これらが足の内側縦アーチを形成する。

 

B-C:外側縦アーチ

距骨下関節から踵骨に伝達された応力は立方骨から第4・5中足骨へと伝達され、これらが外側維アーチを形成する。

 

A-B:横アーチ

中足骨頭は第2・3骨頭部が頂部となる横アーチを形成している。

 

⇒これらのアーチのうち内側縦アーチの低下した状態を扁平足と呼ぶ。

 

 

・アーチの低下には関節や靭帯の弛緩性や下腿の筋力、体重などが関係するが、成長過程で後脛骨筋などの下腿の筋肉が未発達のために筋力が弱く、この変形が起こると考えられる。
⇒成長とともに筋力が増強され骨や靭帯が成熱していくと、アーチは形成されていくことが多い。

 

・ほとんどが無症状であるが歩容異常(べたべた歩く)、足の裏が平べったい、転びやすいなどの訴えのほか、下腿や足部の疼痛を訴えることもある。
⇒歩き始めの時期、幼児期以降に来院されることが多い。

 

・立位荷重時に変形が増強し、縦アーチが消失するが、つま先立ちさせるとアーチが出現する。

 


図8  Too many toe sign

足部を後方から観察すると踵骨は外反しており前足部が外転して通常より多くの足趾が見える。

 

・治療としては、ほとんどの症例で成長とともに改善されるため、経過観察とする。

 

 

③アキレス腱短縮を伴う可動性偏平足

 

・可撓性扁平足(flexible flat foot)と同様に非荷重時では扁平足を呈しないが、荷重時に足の縦アーチが消失し、外反扁平足を呈する。

 

・アキレス腱の短縮による足関節の背屈制限がみられることで、可撓性扁平足(flexible flat foot)とは鑑別される。

 

・治療としては、可撓性扁平足(flexible flat foot)に準ずるが、それに加えアキレス腱のストレッチを指導する。

 

 

④先天性垂直距骨

・小児の扁平足のうち、硬くて治療を要する扁平足のひとつである。

固く拘縮しているため徒手矯正は困難であり、徒手矯正可能な先天性外反踵骨と鑑別できる。

 

・文字通り、足の骨の配列異常により距骨が垂直に偏位しており、足のアーチが形成されず、足底が出っ張った状態(舟底変形)を呈する。

⇒前足部は外反、後足部ではアキレス腱緊張により尖足を呈する。

⇒足関節はある程度背屈可能だが、底屈は極度に制限されている。

 


図9 先天性垂直距骨、単純X線足部側面像

変形は明らかであり、距骨に対し第1中足骨が背側へ偏位している。

 

・発生は1/10,000で先天性足部変形の4%以下との報告がある。性差はなく半数が両側に発症する。

 

・原因は胎児期の発育障害、子宮内空間の減少、神経や筋肉の異常、遺伝子の異常などがいわれているが、いずれも明らかでない。

⇒およそ50%の患者が二分脊椎や先天性多発関節拘縮症、仙椎無形成症、脊髄正中離開、染色体異常などを合併しているため、そちらの疾患の精査も重要である。(

 

※二分脊椎

脊椎の一部がうまく形成されず、脊髄が背骨に覆われない状態である。

脊髄が皮膚に覆われているかどうかで「開放性二分脊椎」と「閉鎖性二分脊椎」に分けられる。

異常部位から下に神経障害が生じ、下肢の運動麻痺や変形・左右差、感覚異常、排尿障害(繰り返す膀胱炎、頻尿)、 便秘などが生じる。

 

※先天性多発関節拘縮症

子宮内で発生して、多くの関節が固まる病気の総称である。

いくつかの関節が弯曲した状態で硬直し、曲がらなくなる。硬直した関節に付着している筋肉は通常弱く、発達が不十分で、神経損傷を認める場合もある。

 

※脊髄正中離開

脊髄が部分的に縦に裂け、その離開した脊髄の間に中隔と呼ばれる骨性・軟骨性・線維性の組織が存在する先天性の奇形である。

 

 

・治療としては、広範囲な手術をできるだけ回避するために、新生児期のできるだけ早い段階でギプスによる矯正が行われる。

⇒前足部のストレッチを行い、底屈位させ内転方向に矯正していく。

⇒変形が大きい場合は手術で整復し関節固定、必要に応じて周囲の筋肉を延長させる。

⇒ギプス除去後は装具、足部のストレッチ指導を行いながら経過観察とする。

 

 

 

さいごに

今回はこどもの内反足・外反足について学び、まとめました。

こどもの足部変形は積極的に治療すべきものから経過観察のみで良いものまで様々あり、足部のみに注目すれば良いのか、他の疾患からなるものなのか、鑑別しながら治療を行うことが重要です。

この知識がレントゲンを通して、患者様に寄り添った医療提供につながればと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。