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クリニックブログ BLOG

院内勉強「膝内側側副靭帯損傷、前十字靭帯不全に伴う膝内側部痛の診断と治療」


理学療法士の山形です。
今回は「内側側副靭帯損傷、前十字靭帯不全に伴う膝内側部痛の診断と治療」について学んだため報告します。

〈膝内側側副靭帯損傷について〉

膝の内側側副靭帯(medial collateral ligament:MCL)損傷は比較的頻度が高く、スポーツ活動においてよくみられる損傷で膝への外反力が加わり受傷する。
外反時の膝の屈曲角度、回旋などにより合併損傷を伴い、日常診療にて前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷との合併が多くみられる


〈MCL損傷の診断〉

●病歴・受傷機転の聴取

膝関節にどの程度の外力が外側から加わったのか、受傷後にスポーツ活動が継続できたのかなど。
ACL損傷との合併損傷においてMCL損傷は交通事故や転落といった高エネルギー外傷では手術療法が必要となる場合がある

●理学所見
MCLの圧痛点(近位、実質、遠位)を確認する。
徒手検査として膝30°屈曲位、伸展位で外反ストレスを加えて健側と比較する。

●画像所見
病歴、理学所見である程度の診断をつけた後に画像検査を行う。
単純X線撮影を膝30°屈曲位、伸展位で外反ストレスを加えて行い、左右差を評価する。
さらにMRIを行いMCLの損傷部位、合併損傷の確認を行う。


〈MCL損傷の治療〉

MCL損傷は基本的に保存療法で予後は良好であるため多くの場合、保存療法が選択されます。MCL損傷単独で手術療法を選択することは少なく、ACL損傷を伴う急性期のMCL損傷に対しても保存療法の成績は一般に良好である。

手術療法の適応は見解の一致が得られにくいですが、MCL付着部の裂離骨折を伴う症例、関節内に損傷したMCLが反転して挟まっている症例、脛骨側での完全な裂離損傷例、後十字靭帯(posterior cruciate ligament:PCL)損傷合併例、ACL/PCLの両十字靭帯損傷合併例は急性期の手術適応と述べられている。


〈ACL不全に伴う膝内側部痛について〉

ACL不全を長期間放置すると前後不安定性と回旋不安定性により多くの問題が生じる。
放置されたACL不全膝においては半月板損傷や軟骨損傷をきたし、変形性膝関節症へと進行していく可能性がある。ACL不全膝の患者に膝内側部痛を認めた場合には、内側半月板損傷と軟骨損傷、内側コンパートメントの変形性膝関節症を第一に考える必要がある。


〈ACL不全の診断〉

●問診、疼痛部位の確認

患者の主訴と症状を傾聴し診察することが大切である。不安定と疼痛のどちらで困っているのか、あるいはその両方なのか把握する。疼痛部位は内側であることを確認する。

●理学所見
ACL不全に対してLachman testやPivot shiftが陽性なのかに加え半月板に対してMcMurray testを行う。
半月板がバケツ柄断裂になっている場合は膝関節に可動域制限を認めることが多い。
圧痛の確認では、変形性膝関節症に進行していた場合、関節裂隙のみならず鵞足部にも圧痛を認めることがある。

●画像所見
ACL不全のみでは通常単純X線は正常であるが変形性膝関節症の有無をチェックする必要がある。
変形性膝関節症を認める場合は両下肢の荷重位全長で内反変形の程度を評価する。
MRIでは、ACL損傷に加え半月板損傷や逸脱、軟骨損傷を評価できる。
超音波検査では関節の腫脹や半月板の逸脱、局所の血流など簡便に観察できる。
CTは骨形態を把握可能でACL再建術後の不全膝(再断裂症例)では骨孔の位置を確認するために必須である。


〈ACL不全膝の治療〉
基本的に膝関節内側の疼痛を伴うACL不全膝では保存療法は難しい。
何らかの理由で手術療法が選択できない患者においては保存療法の適応になると考えるが、その際は生活指導、関節注射、装具療法を試みる。疼痛緩和は可能だがスポーツ復帰は難しい。


さいごに
今回はMCL損傷とACL不全に伴う膝内側部痛の診断と治療について学びました。
膝の靭帯損傷、特にMCL損傷はスポーツ活動でよくみられる損傷なので、学生さんなどの若い方は気をつけていただきたいです。
変形性膝関節症に進行する場合もあるので、今後もご自身の脚で痛みなく歩いていくために怪我をした時は早めの受診をお願いいたします。

当院では、このような勉強会を定期的に開催しています。次回の投稿もお楽しみに!