●はじめに
こんにちは、理学療法士の佐野です。7月8日に行われた院内勉強会に参加しました。
今回のテーマは「膝離断性骨軟骨炎の診かた」についてです。
●膝離断性骨軟骨炎とは?
膝離断性骨軟骨炎(OCD)は成長期スポーツ傷害の一つで、スポーツ活動での継続した剪断力ストレスによる微小外力が原因とされる説が有力です。
症状は主に運動時痛で病巣が不安定になるとロッキングや関節軟骨炎や関節水腫が生じることもあります。
13~21歳に好発し、一般的な頻度は10万人あたり15~29人とされています。男女差を見てみると男性の方が多い傾向にありますが、近年での女性のスポーツ参加の増加により女性の発症も増加してきています。
スポーツ傷害としての頻度は稀であるものの診断の遅れや不十分な治療は高確率で変形性膝関節症に移行するとされているため早期診断と適切な治療が求められます。
●膝離断性骨軟骨炎の診断
膝離断性骨軟骨炎の診断ではX線やMRIによる画像診断により行われますが、X線では正常と異常の判断が難しく他の病態との判別がしにくい事からMRIによる画像診断が主として行われます。
図1 小児のX線
図1のように小児のX線では膝離断性骨軟骨炎による透亮像と正常の骨化核の不整像を見間違える可能性もある。
図2 MRIによる画像
X線に比べるとMRIでの画像診断の方が障害部位を見つけやすく、X線で検出不能な初期の病巣やX線で検出された病巣の詳細な情報を得ることができるとされています。
●膝離断性骨軟骨炎の治療
膝離断性骨軟骨炎の治療方針は保存療法と手術療法があり骨端線の状態や病巣の不安定性、大きさにより変わってきます。
保存療法
→骨端線閉鎖前で病巣が安定している場合は、保存療法が選択される場合が多く、60%が奏功するといわれています。主には運動の休止による負担軽減が原則であり、関節拘縮予防のための非荷重化での可動域訓練を行います。
その後病巣の改善が見られれば大腿四頭筋訓練といったリハビリテーションを行い、安静度を挙げていき、3ヵ月以降での運動復帰が望ましいとされています。
手術療法
→骨端線閉鎖後や3~6ヵ月の保存療法を行ったのにもかかわらず病巣の改善が見られない場合、発見時すでに病巣の不安定さが見られるケースには手術療法が行われる。病巣の不安定さを示す評価としてICRSが用いられ、段階はⅠ~ⅣでⅠ、Ⅱは安定型、Ⅲ、Ⅳは不安定型として扱われる。
ICRS₋OCD Ⅰ:関節軟骨は安定 病巣は安定している
ICRS₋OCD Ⅱ:関節軟骨は一部不連続であるが、病巣は安定している
ICRS₋OCD Ⅲ:関節軟骨は不連続で不安定であるが転位してない
ICRS₋OCD Ⅳ:病巣骨軟骨片は転位、剥離している
手術様式は病態によってさまざまであるが、病巣掻爬やドリリング術(図3)、骨軟骨片固定術、自家骨軟骨移植術、自家培養軟骨移植術などの手術様式がある。
図3 ドリリング
●さいごに
今回は膝離断性骨軟骨炎の診かたについて学び、まとめていきました。
膝離断性骨軟骨炎の症状や好発年齢、病態における治療の選択とその方法について理解を深めることができました。
膝離断性骨軟骨炎は好発する年齢が若く、部活動の参加による活動量も多い年代である為、保存療法における運動の休止における身体への負担軽減の重要性を理解してもらう事が大切だと考えます。
運動の休止期間が3~6ヵ月と長期にわたる場合もあるので本人の気持ちもケアしつつ治療を行っていくことを心掛けていきたいと思います。
当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。