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院内勉強会「腰椎分離症」

はじめに

こんにちは、放射線技師の武田です。

6/10に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は“腰椎分離症”についてまとめたいと思います。

 

 

腰椎分離症とは?

 

腰椎分離症は椎弓(ついきゅう)と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことをいいます。
椎弓はリング状の構造で、その斜め後方は細く弱い部分となっています。

背中を反らす、腰の回旋、ジャンプなど、腰に負担のかかる動作を繰り返すと椎弓の弱い部分にヒビ(疲労骨折)が入ってきます。

この状態が続いて、ヒビが治らないまま骨が離れてしまうと偽関節状態となり、後に腰痛、シビレなどの原因になります。

一般の人では約6%に分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が分離症になっています。

 


図1 腰椎模型(左:真上から 右:斜め後ろから)

 

腰椎分離症は「疲労骨折を起こした急性期」と「骨が離れてしまった慢性期」で病態が大きく異なります。以下からはその2つを分けてまとめていきます。

 

 

 

腰椎分離症の急性期病態

 

〇好発年齢:10代(まれに20代)

身体が柔らかく、骨が成長しきっていない10~18歳に好発し、その多くがスポーツ選手となっています。男女比は男性の割合が高くなっています。

 

 

〇痛みの原因:疲労骨折

 

背中を反らす、腰の回旋、ジャンプなど、腰に負担のかかる動作を繰り返す事が原因です。

⇒スポーツの反復練習など…

 


図2 急性期腰椎分離症 画像所見

左A:CT水平断像 わずかに骨折線を認める。

右B:MRI水平断像(STIR像) 椎弓根および周辺軟部組織の浮腫もしくは出血と思われる高輝度変化を認める。 

 

 

〇痛みの性質:運動時、鋭い腰痛

 

「重い」「だるい」といった類の症状はなく、座る時や座ったままでも痛みが誘発されないのが特徴です。スポーツの練習時のみ痛いという場合が多いです。

 

 

〇治療方法:安静、装具治療など

 

痛みの原因となったスポーツや運動を休止させることが第一で、加えてコルセットで固定し骨折部分に力がかからないようにします。

急性期は離れた骨がくっつく見込みがあるため、約6カ月の固定・安静とします。

しっかりと固定・安静を行えば1カ月程で痛みは改善することが多いです。

 

※固定・安静を行ったにもかかわらず、「重い」「だるい」といった痛みの性質が異なる腰痛が出現している場合は、疲労骨折に伴った椎間板変性や背筋群の緊張が原因の可能性があります。

 


図3 椎間板変性を伴う急性期腰椎分離症のMRI画像

左A:MRI(STIR)冠状断像 疲労骨折部に高輝度変化を認める。

中B:MRI(STIR)水平断像 疲労骨折部に高輝度変化を認める。

右C:MRI矢状断像 分離部の頭側隣接椎間板に椎間板変性を認める。

 

 

 

腰椎分離症の慢性期病態

 

〇好発年齢:10代以降のすべての年齢層

急性期の疲労骨折が骨折したまま治癒してしまった(=偽関節)が直接・間接的に痛みの原因になります。

いわゆる“腰に爆弾を抱えている”状態であるため、何時それが爆発するかは個人差があります。

 

 

〇痛みの原因:偽関節、椎間板変性、腰椎すべりなど

 

偽関節部分は不安定なため負担がかかりやすく、炎症によって痛みを引き起こすことがあります。

不安定ということは、周囲の組織で支えるために過剰な力がかかります。

これが背筋群の緊張、椎間板変性、関節変形などの原因となります。

また、不安定さによって腰椎がずれてしまう場合は腰椎すべり症となります。

慢性期病態における腰痛の原因は必ずしも分離・偽関節そのものではない。

 


図4 慢性期腰椎分離症 画像所見

左C:CT矢状断像 偽関節化を認める。

右D:CT水平断像 分離部には広いギャップがあり、骨癒合は期待できない。

 

 

〇痛みの性質:腰部の鈍痛、下肢痛の合併など多様(痛みがない場合も多い)

 

分離部周辺の慢性的な鈍痛、腰椎すべり症になれば腰椎が動いてしまった分で神経が圧迫され、下肢痛やシビレが出現します。

 


図5 腰椎分離すべり症 画像所見

左A:単純X線側面像 

L4分離は偽関節化しており、L4-L5椎間板の椎間狭小化とVacuum現象を認める。

 

右B:MRI矢状断像(T1強調像)

L3-L4椎間の椎間孔に脂肪(高輝度像)と神経根(低輝度像)が観察できるが、L4-L5椎間では分離すべりに伴い椎間孔狭窄がみられ、脂肪(高輝度像)が消失し、L4神経根の症状を呈していた。

 

Vacuum現象とは

何らかの原因で椎間板内圧<大気圧となり、椎間板内に気体が生じる現象であり、椎間板内の透亮像として認められる。

腰痛、椎間板変性、椎間関節の変形、不安定性に関連があるとされる。

 

 

〇治療方法:対症療法、手術など

 

分離部の炎症性の痛みは局所麻酔や抗炎症薬(ステロイド薬)で症状が改善することがあります。

背筋群の緊張からの痛みはリハビリテーションなど、腰椎すべり症からの神経障害はコルセットで固定などの保存治療により、分離部自体を治療しなくても腰痛改善することがあります。

改善不良な場合は病態に応じた手術を行います。

 

 

 

おわりに

 

今回は腰椎分離症について学び、まとめていきました。

今回の勉強会で腰椎分離症の中でも急性期・慢性期があるということ、それによる痛みや治療の違いや意義を理解できました。

当院において、小学生~高校生で腰痛を訴えて来院される患者様は少なくありません。

この知識を患者様との関わり、撮影業務に生かせればと思います。

当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。