●はじめに
こんにちは、理学療法士の小幡です。
先日、勉強会が行われましたので、まとめていきます。
今回の勉強会のテーマは「アキレス腱周囲組織の障害に対する超音波診療」についてです。
アキレス腱障害は、整形外科外来において診療する頻度が高い疾患の1つで、病変部位によって付着部の障害(insertional Achilles tendinopathy)と実質部の障害(non- insertional Achilles tendinopathy)に大別されます。
さらに、その病態がアキレス腱実質部ではなく、足底筋膜や下腿筋膜などアキレス腱周囲組織に存在する(Achilles paratendinopathy)症例も報告されています。
●アキレス腱周囲組織の障害に対する診断の進め方
一般的にアキレス腱実質部周囲の疼痛と腫脹を伴い、中でも下腿筋膜が肥厚していると、足関節を動かす際にアキレス腱周囲がギシギシとなる感じを触診できたり、時には聴取できたりすることもあります。
身体所見から区別することが、しばしば困難でありますが、超音波を用いることで容易にアキレス腱周囲組織の障害と実質部の障害を区別することが出来ます。
アキレス腱周囲組織の障害(Achilles paratendinopathy)では、パラテノンや下腿筋膜、足底筋腱などが低エコーを呈し、肥厚しています。多くの場合、アキレス腱の内側・外側のどちらかに疼痛を生じているが、アキレス腱の内縁・外縁の異常所見は、長軸像では描出できないことがあるので、必ず短軸像も観察します。
アキレス腱外側に疼痛がある症例では、下腿筋膜が肥厚し、疼痛の原因となっていることが多いです。また、アキレス腱内側に疼痛がある症例では、足底筋腱が肥厚していることがあります。
●アキレス腱周囲組織の障害(Achilles paratendinopathy)に対する治療の進め方
治療の基本は、投薬や足底板、理学療法といった保存療法となります。
急性発症で、患部が腫脹し超音波検査で血流増加像が観察できるような症例においては、経口できる消炎鎮痛剤が処方されます。
アキレス腱障害と同様に、荷重や下肢アライメントがアキレス腱やその周囲組織に与える影響は高く、足部の形態や体幹・下肢機能に応じた足底板も処方していきます。
理学療法を行う際は、足関節・足部周囲だけではなく、股関節や体幹の機能・バランスの評価を行うことも重要となります。近年、アキレス腱障害のリスク因子として、下腿三頭筋のタイトネスが注目されています。下腿三頭筋のタイトネスは、足関節の背屈可動域制限を来し、それによって歩行や走行時の足部・足関節にかかる荷重や運動パターンが変化して、アキレス腱に負担がかかり障害を来すと考えられています。
●さいごに
今回はアキレス腱周囲組織の障害に対する診断や治療の進め方について、まとめました。
アキレス腱周囲組織の障害に対する治療の参考となり、またアキレス腱実質部と周囲組織の判別に超音波の有効性を学ぶことが出来ました。
当院では、このような勉強会を定期的に実施しております。今後も患者様のために研鑽していきます。今後の投稿も楽しみにしていてください。