放射線技師の武田です。
2/21に行われた院内勉強会に参加しました。
今回は”大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)と股関節の画像診断・撮影法”についてまとめたいと思います。
☆大腿骨寛骨臼インピンジメントとは
(femoroacetabular impingement:FAI)
寛骨臼側、大腿骨側における軽度の骨性変形を背景として、股関節運動中、あるいは運動終点において繰り返し衝突(インピンジメント)が起こることによって、寛骨臼縁の関節唇および軟骨に損傷が生じ、股関節痛、ひいては変形性股関節症(OA)を引き起こす病態である。
☆FAIの分類
図1 FAIの分類
a(左).Pincer type impingement
・寛骨臼側に起因する。
⇒寛骨臼前外側の過度の骨製被覆によって生じる。
・30~40歳代の女性に多くみられると報告されている。
・大腿骨頚部とのインピンジメントにより関節唇が損傷され、やがて寛骨臼側の軟骨損傷をきたす。
b(中).Cam type impingement
・大腿骨側に起因する。
⇒骨頭頚部移行部に生じた骨頭の骨性膨隆部によって生じる。
・20~30歳代の男性に多くみられると報告されている。
・寛骨臼縁の関節唇-関節軟骨移行部に負荷を加えて軟骨剥離などをきたして関節軟骨が損傷される。
c(右).Mixed type impingement
・上記のPincer typeとCam typeを合併したタイプである。
☆股関節の一般撮影法
股関節のX線診断には正確な正面像を撮影する必要がある。側面像については軸位像、ラウエンシュタインⅠ・Ⅱ像、false profile像、Dunn像など様々な撮影法があるが、寛骨臼側あるいは大腿骨側で評価したい部位や病態に適した撮影法を選択する必要がある。
今回は当院でも撮影することが多い正面像・ラウエンシュタインⅠ像の撮影法についてまとめる。
【正面像】
図2 股関節 正面
・仰臥位で前後撮影(A→P)とする。
・大腿骨頸部を水平にするため両股関節を10~15°内旋させる。
(両足をハの字にして第1趾を付ける)
・恥骨結合上縁の上方3cmの点に垂直入射する。
・腸骨翼・閉鎖孔の大きさに左右差をなくすため、両側の上前腸骨棘を結ぶ線がフィルムと平行になるようにポジショニングする。
【ラウエンシュタインⅠ像】
図3 股関節 ラウエンシュタインⅠ像
・仰臥位で内外方向斜位撮影とする。
・非検側骨盤を45°フィルムからはなし、非検側膝を屈曲し立膝にする。(肩~腰までしっかり45°傾ける)
・検側股関節を45°外転させ、検側膝関節を90°屈曲させる。
・恥骨結合ー検側上前腸骨棘の中点に垂直入射する。
☆寛骨臼被覆の評価
図4 center edge(CE)角
骨頭中心を通る垂線と骨頭中心と臼蓋外側縁を結んだ線とのなす角度を表す。
20°未満を寛骨臼形成不全、25°以上を正常域、40°以上を過形成とする。
図5 acetabular roof obliquity(ARO)
0°以下で過形成とする。
図6 Sharp角(acetabular angle)
男性:38~42° 女性:43~45°
図7 acetabular head index(AHI)
AHI=A/B×100
大腿骨頭に対する臼蓋の被覆状態を表す。
☆FAIに特徴的な骨形態
〇Pincer typeに特徴的な骨形態
図8 Cross-over sign
股関節正面像において寛骨臼前壁の外側縁が後壁の外側縁と交差する所見であり、寛骨臼の後捻を示唆する。
図9 Posterior wall sign
股関節正面像において寛骨臼後壁の外側壁が骨頭中心よりも内側にある所見であり、寛骨臼の後捻を示唆する。
〇Cam typeに特徴的な骨形態
図10 Pistol grip deformity(ピストルグリップ変形)
骨頭頚部移行部のくびれが消失・平坦化し、大腿骨外側への骨膨隆を伴う変形である。
図11 股関節軸位像におけるα角の増大
…骨頭中心・前方の骨頭頚部移行部を結ぶ線と頚部軸(骨頭中心と頚部中央を結ぶ線)とのなす角を表す。
正常値は50°以下、55°以上を異常値として扱う報告が多い。
OS:Head-neck offset
…骨頭前縁ー頚部前縁の距離を表す。
正常値は10mm以上、あるいは OS/骨頭径D ≧ 0.14 が目安となる。
図12 Herniation pit
骨頭頚部移行部から頚部の前外側に生じる硬化像で囲まれた小円形の骨透亮像である。
☆FAIの診断指針
【画像所見】
Pincer type のインピンジメントを示唆する所見
①CE角40°以上
②CE角30°以上かつARO=0°以下
③CE角25°以上かつcross over sign 陽性
Cam type のインピンジメントを示唆する所見
CE角25°以上
主項目:α角55°以上
副項目:Head-neck offset ratio=0.14未満
ピストルグリップ変形、Herniation pit
⇒主項目を含む2項目以上の所見を要する
【身体所見】
・前方インピンジメントテスト陽性
(股関節屈曲位および内旋位での疼痛の誘発を評価)
・股関節屈曲内旋角度の低下
(股関節90°屈曲位にて内旋角度の健側との差を比較)
⇒最も陽性率が高く頻用される所見は前方インピンジメントテスト
※Patrickテスト(股関節屈曲・外転・外旋位での疼痛の誘発を評価)も参考所見として用いられるが、その他股関節・仙腸関節疾患でも高率に認められる。
【診断の目安】
上記の画像所見を満たし、臨床症状(股関節痛)を有する症例を臨床的にFAIと診断する。
☆まとめ・感想
今回の勉強会によって股関節の撮影法について見直し、新たな撮影法を知る良い機会になりました。
自分が撮影する画像からどのように診断を行っているかを知り、今までより正確な画像を提供しようと強く感じました。
これから他の撮影法も見直し、気を引き締めて初心を忘れることなく、努力を重ねたいと思います。