こんにちは。理学療法士の小幡です
院内で勉強会がありましたので、まとめていきたいと思います。
今回は、上肢の抹消神経障害について学びました。
〇抹消神経損傷の分類(Seddonの分類)
- 局所性脱髄(neurapraxia)
→髄鞘のみが局所的に障害されている状態
睡眠圧迫麻痺などで認められる
運動障害は高度 筋委縮はでない
知覚障害の程度は軽い
損傷部のTinel徴候は出現しない
- 軸索断裂(axonotmesis)
→軸索は断裂しているが、神経内膜・周膜・
外膜は温存されている状態
末梢側にはワーラー変性を生じる
運動・知覚麻痺となり、筋委縮を生じる
膜が連続しているので、発芽した軸索が徐々に抹消へ伸びる
麻痺の回復は1日1~2㎜のスピードで起こる
- 神経断裂(neurotmesis)
→神経が断裂し連続性を失った状態
末梢側にはワーラー変性を生じ、神経構造が壊れる
神経の回復は起こらず、神経修復を要する
〇末梢神経機能の評価
- 病歴
- 視診
- 知覚検査
- 触診
- Tinel徴候
- 腱反射
- 徒手筋力テスト(MMT)
- 誘発テスト
〇末梢神経障害を診断するための検査
- 電気生理学的検査
→臨床診断の補助であり、疾患によっては障害部位が確定され、予後予測も
可能となるため極めて有用。
- 神経幹伝導試験(NCT)
- 針筋電図(EMG)
- 神経伝導速度検査(MCV,SCV)
- 運動神経伝導速度(motor nerve conduction velocity :MCV)測定
- 知覚神経伝導速度(sensory nerve conduction velocity :SCV)測定
- その他
→体性感覚誘発電位(脳波)、F波、磁気刺激による誘発筋電図など
- 画像診断
→神経圧迫の原因となる占拠性病変の確認にCT・MRI・超音波検査が有用
MRIは麻痺筋の同定にも有用
- 血液検査
→種々のニューロパチーを疑う場合に鑑別のため、血液検査でウイルス抗体
や抗好中球細胞質抗体(ANCA)などを測定する場合がある
〇上肢の挙上障害を呈する肩関節周囲の麻痺
・副神経麻痺
→翼状肩甲を呈し、上肢の挙上が困難
・長胸神経麻痺
→前鋸筋の麻痺が生じ、上肢挙上で肩甲骨を胸郭に固定できず、
翼状肩甲を呈する。
・肩甲上神経麻痺
→腱板を構成する棘上筋・棘下筋の麻痺により、肩の挙上・外旋が
障害されるが、明らかな感覚障害はみられない。
・腋窩神経麻痺
→三角筋・小円筋と肩外側の知覚を支配する神経の麻痺。
〇前腕のしびれや運動障害を呈する麻痺
・筋皮神経麻痺
→前腕外側部の知覚障害と上腕二頭筋の筋力低下を生じる。単独で
生じることは稀である。
・橈骨神経麻痺
→腕橈骨筋以下の橈骨神経支配である手関節伸筋、指伸展筋の
麻痺のため、下垂手(drop hand)を示し、知覚は手背の第一
指間背側部の感覚が障害される。
・正中神経麻痺
→筋力は、前腕の回内、橈骨の手関節屈筋、母指示指の屈曲、
母指の対立が障害される。
知覚障害は環指の中央のラインより母指側(橈側)の掌側で、
背側も指尖部はDIP関節あたりまで障害される
ring finger splittingが特徴。
・回内筋症候群
→肘から前腕にかけての回内筋や上腕二頭筋腱膜、浅指屈筋腱弓
における正中神経の絞扼障害で正中神経の知覚障害や痛みが主
症状で筋力低下は目立たない。
・内側前腕皮神経損傷
→前腕部の内側から前腕遠位掌側あたりにかけての知覚障害。
・腕神経叢損傷
→神経根損傷:肩挙上と肘屈曲が障害
上位型:C5~8肩外側から小指までの障害
下位型:肩肘の麻痺がなく手指屈曲や内在筋麻痺と手部・前腕
内側部の感覚障害が主体
・胸郭出口症候群
→胸郭出口部で、神経や血管の圧迫、牽引による上肢のしびれ、
だるさ、痛みなどの症状が引き起こされる。
〇手部のしびれや手指・内在筋の運動障害を呈する麻痺
・前骨間神経麻痺
→母指・示指の屈曲障害が出現。知覚障害は生じない。
・後骨間神経麻痺
→指伸筋を支配し、指の伸展障害が生じ下垂指(drop finger)
となる。
・橈骨神経浅枝麻痺
→手背の第1指間背側から母指、示指背側の感覚障害を呈する。
・尺骨神経麻痺
→背側を含む環指、小指、前腕尺側遠位部の知覚障害と環小指の
深指屈筋、小指外転筋や第一背側骨間筋などの手内在筋の麻痺
が出る。
・手根管症候群
→手根管部での正中神経の絞扼性神経障害で、夜間痛、早朝に
強い指先の痛み、痺れ(正中神経領域)があり、手を振ると
症状が改善するflick signが特徴的である。
・肘部管症候群
→小指から環指、手尺側のしびれと手指の巧緻性障害、肘内側
の疼痛など。
・尺骨管症候群(ギヨン管症候群)
→手掌小指球部の尺骨(ギヨン管)における尺骨神経の絞扼障害
である。
障害の部位により、感覚枝、小指外転筋枝、骨間筋枝(深枝)の
一部またはすべての麻痺を呈する。
感覚障害は、手掌尺側と小指、環指尺側の障害で、背側は保たれる。
参考文献
MB Orthop.30(10):105-112.2017.