放射線技師の武田です。
2/8の院内勉強会”ロコモの関連疾患”に参加しました。
今回はその中の”骨粗鬆症”と”変形性膝関節症”についてまとめたいと思います。
☆骨粗鬆症は致命的な疾患
超高齢社会における骨粗鬆症の重要性は明らかだが、適切な治療が行われていない骨粗鬆症患者はまだ多い。骨粗鬆症および骨粗鬆症骨折は日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を損なうのみならず、寿命をも短くすることが明らかになっており、注意喚起が必要である。
☆骨粗鬆症骨折は短命化に直結する
〇全ての臨床的な骨折は、死亡の相対リスクを約2倍増加させる
※橈骨遠位端骨折など、骨粗鬆症性骨の中にも死亡相対リスクの増加は見られないものもある
・椎体骨折⇒死亡相対リスクが約9倍増加
・大腿骨近位部骨折⇒死亡相対リスクが約7倍増加
上記2種類の骨折は骨粗鬆症骨折の中でも特に重症な骨折である
⇒DXAでこの部位を検査することが重要
図1 椎体、大腿骨近位部骨折後の5年間における累積生存率
・椎体骨折後の5年生存率は約60%である(5年間に約40%が死亡する)
・大腿骨近位部骨折後の5年生存率は約50%である(5年間に約50%が死亡する)
⇓
大腿骨近位部骨折は特に骨折から6カ月以内での死亡率が高い
(グラフの傾きが急)
図2 各骨折後の生存率(75歳以上)
・死亡率の高さは…
大腿骨近位部骨折>椎体骨折>主要な骨折≒その他の骨折>全集団
(生存率は上記の逆となる)
・骨折後の生存率は全て低下するが、特に大腿骨近位部骨折後の生存率低下は著しい
⇓
大腿骨近位部骨折者は、女性では5年足らずで半数が亡くなり、男性では7年半で全員が亡くなる
・骨折後は早期に手術を行い、速やかに離床させることが重要である
☆骨折の一番の予防法
骨粗鬆症の予防には、若年期に運動と栄養等の日常生活で最大骨量(Peak Bone Mass:PBM)を高めていわば骨貯金をしておき、骨量が目減りする将来に備えることが最も重要である。骨貯金が少なければ、早期から容易に骨粗鬆症に罹患しやすくなる。
〇骨発育のピークは2回ある
・1~4歳
・10.5~14.5歳
特に10.5~14.5歳の4年間に成人の骨密度26%を獲得するといわれている
⇓
体格が急激に大きくなる時期であり、その時期に一致して骨も太く、長く大きくなり、骨密度も増加する
・成長期に無理なダイエット等は避けるべきである
⇒健康的な生活、運動が重要
図3 若年女性における骨密度の年齢分布
(12~30歳の若年女性1312名)
・大腿骨における最大骨密度は概ね18歳時であった
・腰椎における最大骨密度は29歳時であった
⇒18歳時に最大値の99.8%を獲得しているので、腰椎骨密度が最大になるのも概ね18歳と考えてよい
〇骨貯金にはHigh Impact Exerciseを実践することが有効である
※High Impact Exerciseとは…
ジャンプして着地するなど、骨に掛かる力学的負荷の大きな荷重運動のこと
⇓
垂直荷重方向の運動が骨代謝の司令塔である骨細胞を刺激して骨の新陳代謝を活発にするため有効である
〇最大骨量(Peak Bone Mass:PBM)の獲得にはカルシウム、タンパク質、ビタミンDが重要である
⇒大腿骨PBMの最大化にはn-3系脂肪酸摂取量が最も影響が大きく、これに加えて身体活動性も関与する
※n-3系脂肪酸とは…
・EPA(エイコサペンタエン酸),DHA(ドコサヘキサエン酸)
⇒魚油に含まれる
・α-リノレン酸
⇒シソ、エゴマ、キャノーラ、大豆油などの植物油
☆変形性膝関節症
変形性膝関節症(Osteoarthritis of the knee、膝OA)は、関節軟骨の変性と摩耗を首座とし、軟骨下骨や半月板そして滑膜など関節内の構造物に変形を来す疾患であり、膝の可動域制限や歩行時痛のため、移動機能が障害される。
図4 単純X線を用いた重症度分類(K/L分類)
・膝OAは、立位で単純X線撮影を行いKellgren-Lawrence分類(K/L分類)を用いて診断する
⇓
明らかな骨棘を認めた場合をグレードⅡと判断し、これ以上を膝OAと判定する
☆膝OA重症度による痛みの違い
〇膝OAの疼痛に重要な因子は”膝関節内局所への過剰な力学的負荷”と”炎症(滑膜炎)”である
過剰な力学的負荷が膝にかかる(※)
⇓
関節軟骨が摩耗し、関節内に摩耗片が遊離する
⇓
摩耗片が滑膜に取り込まれ滑膜炎となる
⇓
炎症性サイトカインの発現が亢進し、疼痛発現
※関節にかかる力が日常的な強さであっても、軟骨や軟骨下骨の脆弱化が起きていれば結果として”膝関節内局所への過剰な力学的負荷”が起こり得る
[膝OA初期 グレードⅠ・Ⅱ]
・炎症サイトカインが疼痛の影響因子となる
⇒抗炎症剤(ロキソニンなど)が有効
・滑膜炎+ 炎症性サイトカイン多
[膝OA末期 グレードⅢ・Ⅳ]
・下肢アライメントが疼痛の影響因子となる
・滑膜炎++ 炎症性サイトカイン少
⇒滑膜炎自体はあるが疼痛への影響は少ない
・強い痛みが長く持続することで疼痛閾値が低下する
⇒疼痛閾値を上昇させる治療が有効(脳・神経に働きかける)
・疼痛閾値の低下が膝周囲のみならず全身的に認める場合がある
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