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院内勉強会 「小児肘関節周囲骨折の診断」

放射線技師の武田です。

7/17に行われた院内勉強会に参加しました。

今回は小児肘関節周囲骨折で代表的な4つの骨折である”上腕骨顆上骨折”・”上腕骨外側顆骨折”・”上腕骨内側顆骨折”・”橈骨頚部骨折”についてまとめたいと思います。

 

 

 

☆肘関節の解剖と小児肘関節の骨化

肘関節解剖 正面

図1 肘関節解剖 正面像

 

 

 

 

図2 肘関節解剖 側面像

 

 

 

図3 小児肘関節の骨化中心(骨端核)の出現順

1.上腕骨小頭 1~2歳頃

2.橈骨頭 3~4歳頃

3.上腕骨内側上顆 5~6歳頃

4.上腕骨滑車 7~8歳頃

5.肘頭 9~10歳頃

6.上腕骨外側上顆 11~12歳頃

 

女児は10~12歳、男児は11~13歳で全ての骨端核が骨化し、骨端線閉鎖時期は14~17歳頃となる。

 

 

☆上腕骨顆上骨折

 

・小児の肘関節周囲骨折の50~70%を占める最も頻度が高い骨折である。

・4~7歳の男児に多く、上肢を伸展したままで高所から転落した際に受傷する。

⇒高所からの転落だけではなく、立位からの転倒、スポーツでの接触・転倒等も原因として考えられる。

・伸展型or屈曲型があるが、ほとんどが伸展型である。

・伸展型では、遠位骨片は後方転位し、内旋、内反、過伸展変形を伴う。

・神経障害が10~15%の高い頻度で合併する。⇒橈骨神経マヒ

・同側の前腕骨折を合併する場合はコンパートメント症候群に注意する。

 

 

【画像所見】

 

図4 Gartland分類 type Ⅰ 12歳 男児

type Ⅰ:転位なし

 

図5 Gartland分類 type Ⅱ 10歳 男児

type Ⅱ:転位を認め、後方の骨皮質は連続している

⇒手術適応

 

図6 Gartland分類 type Ⅲ 10歳 女児

type Ⅲ:遠位骨片が完全に後方に転位している

⇒手術適応

 

※Gartland分類:伸展型上腕骨顆上骨折の分類

 

図7 fat pad sign(白矢印) Gartland分類 type Ⅰ 12歳 男児

関節包の膨張により脂肪組織が近位方向に移動し、X線側面像にて上腕骨遠位部の前後に透亮像を認める。

Gartland分類 type ⅠなどのX線像にて転位を認めず、骨折線を判断し難い場合の指標となる所見であるが、超音波検査にて骨折の診断は容易である。

橈骨頸部骨折、肘頭骨折等でもfat pad signは認められる。

 

 

☆上腕骨外側顆骨折

 

・骨端線、関節面を含む軟骨部の骨折である。

⇒X線像では判断しにくく、見逃しやすいため、肘関節外側部の圧痛を注意深く確認すべきである。

・小児の肘関節周囲骨折の10~20%を占め、上腕骨顆上骨折の次に頻度が高い骨折である。

・4~10歳で好発し、5,6歳で最も多い。

・上腕骨顆上骨折とは異なり、観血的治療が必要なことが多い骨折である。

・骨折するパターンとしては2つ、肘伸展位で転倒し…

⇒外反ストレスにより外顆が剥離骨折

⇒内反ストレスにより橈骨頭に突き上げられて骨折

↪橈骨頭が衝突するのは上腕骨小頭であるが” 図3 小児肘関節の骨化中心の出現順”より、上腕骨小頭は早めに骨端核を形成するため、構造的に強い。よってまだ軟骨で構成され、構造的に弱い場所が骨折する。

 

 

【画像所見】

 

図8 Jakob分類 stage Ⅰ(a) stage Ⅱ(b) stage Ⅲ(c)

stage Ⅰ(a):転位がなく関節面に達しない骨折

stage Ⅱ(b):関節面に達する骨折

stage Ⅲ(c):骨片が回旋転位する骨折

 

図9 左上腕骨外側顆骨折 Jakob分類 stage Ⅱ  3歳 男児

X線正面像(a)ではわかりにくいが、斜位像(b)では骨折線が鮮明に描出されている。

 

図10 左上腕骨外側顆偽関節 14歳 男児 9歳時に受傷

・偽関節は、上腕骨外側顆骨折の最も注意しなければならない合併症である。

・上腕骨外側顆骨折は関節内骨折であること、骨片の血流が乏しいことなどから偽関節が生じやすいと考えられる。

 

 

☆上腕骨内上顆骨折

 

・肘の外反強制の際の前腕屈筋群の牽引による剥離骨折である。

⇒投球フォームなどでも引き起こされる。

⇒外反強制すると疼痛が増強する。

・小児の肘関節周囲骨折の約10%を占め、7~15歳に多い。

・50~60%が脱臼と同時に発生する。

 

【画像所見】

 

図11 Watson-Jonesらの分類

type Ⅰ(a):転位のない剥離骨折

type Ⅱ(b):骨片が関節レベルまで転位

type Ⅲ(c):骨片が関節内に転位

type Ⅳ(d):骨片が関節内に転位し、脱臼を伴う

 

図12 左上腕骨内上顆骨折 12歳 男児 Watson-Jonesらの分類 type Ⅱ

・6歳以上の場合は、軽度の転位であってもX線像で容易に診断できる。

・5歳以下では”図3 小児肘関節の骨化中心の出現順”より、内上顆はまだ軟骨であるため骨折線を確認できない。

⇒健側との比較が重要である。

 

 

☆橈骨頚部骨折

 

・肘伸展位で転倒して受傷することが多く、小児の肘関節周囲骨折の約6%を占める。

・小児では、橈骨頭骨折よりも橈骨頚部骨折となることが多い。

・比較的に後遺症は残りにくい。

 

【画像所見】

 

図12 O’Brien分類 橈骨頭の関節面の傾斜角で分類する

type Ⅰ:30°未満

type Ⅱ:30~60°

type Ⅲ:60°以上

 

図13 肘関節撮影 前腕にあわせてポジショニング

・橈骨頚部骨折では、疼痛のために肘関節を伸展できなくなるため、正確なX線正面像を撮るのは困難である。

・橈骨頚部骨折が疑われる場合は、屈曲したまま前腕が正面になるように撮影する。

※伸展不可で上腕骨側の骨折を疑う場合は、屈曲したまま上腕が正面になるように撮影する。

 

 

☆まとめ・感想

 

私は今までレントゲンに写らない”軟骨”というものに注意を向けた事があまりありませんでした。

今回の勉強会で”小児の肘関節”というより深い内容を知り、普段のレントゲン撮影で大人・子供と分けて考えていなかったと反省しました。

小児の肘の解剖、骨折の形態など、今回学んだことを日々の業務に落とし込み、より患者様に苦痛を感じさせないよう、正確な写真をとれるよう、努力していきたいと思います。