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院内勉強会「アスリートにおける鼠径部痛」

理学療法士の森田です。
先日、院内勉強会が行われましたので報告します。

今回、「スポーツ股関節痛」を主題として、
アスリートに鼠径部痛は診断が困難であり、
治療が長期化することが多く未だにその診断と治療
に一定のコンセンサスが得られていない。
2014年に鼠径部痛(groin pain)は5種類に分類された。

その分類方法は簡潔であり画像診断を一切含まないことが
特徴であり、シンプルにすることを重視し、触診と抵抗時痛
を中心とした身体所見による評価を用いて分類した。
 
◎5種類の分類
〇内転筋関連鼡径部痛
内転筋に一致した圧痛と内転筋の抵抗時痛を有する鼠径部痛。
疼痛評価だけでなく内転筋の筋力低下の評価も重要である。

〇腸腰筋関連鼡径部痛
股関節屈曲時の抵抗時痛、もしくは股関節伸展時の伸張時痛
にて診断される。
圧痛による診断は触診に関して不確実性があるため
特別に記載はない。

〇鼠径部関連鼡径部痛
鼠径管に一致した圧痛を有するが、ヘルニアが触知されて
はいけない。抵抗時痛はvalsalvaや咳嗽などによって出現
する疼痛をもって陽性としている。

〇恥骨関連鼠径部痛
恥骨結合を中心にその周囲の骨性組織の局所的な圧痛を認める。
恥骨関連鼠径部痛のみが抵抗時痛を誘発する徒手検査を
必要とされず、圧痛のみをもって診断されるのが特徴的である。
内転筋の付着部とも一致するため、時に内転筋関連鼡径部痛
との判別に難渋する。

〇股関節関連鼠径部痛
日本では、股関節痛と鼠径部痛は別々な疼痛として考えられる
ことが多いが、股関節内に疼痛の原因があっても鼡径部痛として
捉えることが重要である。
スカルパ三角を中心とした徹底した触診に加え、catching症状
などの機械的症状の有無を確認するが、身体所見のみで
股関節関連鼠径部痛を診断することは難しい。
FABER(flexion-abduction-external-rotation)test
FADIR(flexion-adduction-internal-rotation)test
の施行を推奨している。
しかし、股関節疾患に対する徒手診断は感度が高いが特異度が低い
ことから、股関節疾患の除外診断には有用であるが陽性をもって
安易に股関節関連鼡径部痛と診断することは避けるべきである。
 
◎大腿骨寛骨臼インピンジメント
大腿骨近位と寛骨臼の骨形態異常がスポーツなど繰り返し動作
によりインピンジメントし、寛骨臼関節唇や軟骨損傷を引き起
こす疾患概念である。
現在、アスリートのFAIに対する手術は股関節鏡視下手術を
中心に多く行われ、良好な臨床成績が報告されている。
手術は、インピンジメントの原因となる骨形態異常の修復と
インピンジメントの結果として起こる寛骨臼関節唇損傷の治療
を同時に施行することが可能である。
インピンジメントの解除が鼡径部痛の治療に効果的
という報告もある。
インピンジメントによって恥骨結合および仙腸関節にストレス
がかかることも報告されており、FAIと恥骨関連鼡径部痛の
関連についても注目すべきである。

◎groin painの機能不全を探せ
診断・治療を行うにあたり、詳細を問診で痛みが発生する
数年前まで遡って機能不全を起こすに至った外傷・障害や
トレーニング内容を確認することが重要である。
痛みを伴っていなくても、機能不全をきたしていることで
反復する運動により痛みを生じる可能性が高まるため、
機能不全の早期修正が予防につながる。
慢性化したgroin painは、運動を休止しただけでは
機能不全は改善せず、たとえ器質的病変が修復しても
復帰が難しい。しかし、機能不全を改善すれば、
器質的病変が修復しなくても復帰可能な例が存在する。

◎リハビリテーション
胸郭の可動性、体幹機能、運動連鎖を評価して改善
させる。呼吸と肋骨、横隔膜の機能を改善させる
ことで、下肢の動作に先行してコアのインナーユニット
による体幹の安定化が適切に行われ、それによって
主動作筋であるアウターユニットは少ない活動量で
安定かつ円滑な動作遂行がなされることが研究・
報告されている。また、骨盤・股関節の安定性には
骨盤の位置と体幹筋群の収縮のタイミングが重要
であるという報告もなされている。